第十五章 ページ16
「……Aさん」
とある日の正午。
葵さんは組の仕事で今は居ない。
昼ご飯にするためテーブル拭きをお願いした樹くんが、ぽつりとこう言った。
『ん？』
「Aさんは。
……極道なんかと一緒に暮らしてて幸せなの」
キッチンから彼の姿を見た。
小さな肩はほんの少し震えているように見えて、料理を盛り付ける手を止めた。
『急に、どうしたの？』
「僕には分かんない。
……分かんないけど、ママは。
ママは……」
樹くんは視線を床に落とす。
組織としては裏切者だったかもしれない女は、この子に取っては大切な母親だったんだろう。
裏事情は俺には分かりっこないけど、彼女も樹くんのことを愛していたのだと思う。
でなければ、こんなにも彼が母親のことを引きずるはずがない。
俺は食器をその場に置き、ゆっくりと彼に歩み寄った。
頬に手を添えればびくりと驚いたけれど、俺の手を払うようなことはしなかった。
『……樹くん』
「…………」
『実を言うとね、俺も最初は葵さんが大嫌いだった』
「……え」
ぱ、と顔を上げる樹くん。
俺は小さく笑みを作って。
『俺ね、本当はイタリアのディーラーやってたの。
分かる？
あのトランプとか使って、賭け事をして、お客さんに楽しんでもらうの。
俺はその仕事が好きだった』
「だったら、何で」
『葵さんがそこに視察に来た時に、俺はあの人に気に入られちゃったみたいで。
賭けに勝ったらお前を娶るー、なんて言われてね。
俺は、賭け事は本職なのに負けちゃってさ。
無理矢理この国に連れてこられたんだよ』
『ふふ』と笑えば、樹くんはぱちくりと瞳を瞬かせる。
「だったら、尚更どうして」
『不思議だよね、俺もびっくり。
でも、こうやって一緒に居るとね、あの人が本当に俺のことを好きだって思ってくれてるのが分かるんだ。
それがとっても嬉しくなって、愛おしくなって。
……いつの間にか、彼に惚れてた』
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空弥(プロフ) - 木の実☆（このみ☆）さん» 椿お嬢様あああああ(便乗)彼女はホントはいい子ですはい……。ありがとうございます！三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (
レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - アカツキ@鞠さん» ありがとん(ﾊｧﾄ)((某は三弾書いたでb (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - シェエラさん» ありがとうございます！ウルウルしてくださったんですか!？ほわあああ、嬉しい……。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - メロン大好き星人さん» ありがとうございます！私としても、書いてて面白い回でした。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - 桔梗さん» ありがとうございます！こんな作品を楽しみにしてくださるなんて……、嬉しい限りです。三弾、更新いたしましたので、今後ともよろしくお願いします。 (2018年10月27日 20時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空弥 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/karaichi2422/
作成日時：2018年9月24日 15時
