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3 「交渉」 ページ4

夜の公園のブランコに二人で座って、小さく息を吐いた。

無言の時間が続いてどうしようかと思っていると、「あの」と渡井くんの声。


「話してみてくださいよ。

僕の母が悩み事は人に話すと楽になるって言ってました。

……僕が力になれるかは、分かりませんけど。

ただの花屋の店員がお客さんの世間話聞くだけです、大丈夫です。

お客さんのプライバシーは口外しませんよ」


視線を地面に落としながらこう言ってくれる渡井くん。

そうか、客と店員の世間話。

妙に「なるほど」と納得してしまった私は、躊躇いながらも一連の流れを彼に説明した。




「……最低ですね」


私の話を聞き終えて、第一に渡井くんが発した言葉はこれだった。


「男の中のクズです。

流石に雨野さんとのプライベートゾーンに違う人連れてきたら、流石に傷つきますよ……。

他所で浮気するのの何倍もタチ悪いです。

しかも結婚前でしょう?

時期を考えろ、時期を」


同じ男である渡井くんが、功樹の行動をばっさり切ってくれたことに驚き、そしてすっきりした。

渡井くんの眉は怪訝に顰められていて、「嗚呼、本当にそう思ってくれてるんだ」と安心する。


「……それで?

雨野さんは飛び出てきちゃったわけですか」

『う、うん、そうだね……。

でも、泊まる場所が無くってさ、やっちゃったなって……』

「正しい判断です、気に病むことはないです。


……嗚呼、なら僕の部屋に暫く住みますか?」

『いいの!?』

「ええ、今なら家賃もタダでいいです。

元々僕の住んでるところルームシェアのところで、僕の相手が最近遠くに引っ越したんですよ。

だから部屋に関しても心配いらないですし」


そう言いきった渡井くんに『いっ、いやいや』と首を振る。


『いや、流石にタダは気が引けるって……。

半分ぐらい払わせて』

「要らないです。



……代わりに」



すっ、と立ち上がった渡井くん。

そのまま私のほうへ歩み寄ると、私と目が合うようにその場にしゃがみ。

私の頬に手の平を置くと。



そっと私の唇に、しっとりとしたキスをした。



ゆっくりと顔が離れていく。

その渡井くんの顔は月光に照らされて、やけに色っぽく見えた。



「一日一回、僕とキスしてください。

それが条件です」

4 「練習台」→←2 「花屋さん」



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ニコちゃんマーク - めっちゃ面白いです!最新待ってます!文字ってどうやったらこんなのにできるんですか? (2019年7月30日 8時) (レス) id: c2a6a5489d (このIDを非表示/違反報告)
かなと - なまむぎ。さん» この作品大好きです!更新待ってます!! (2019年7月30日 6時) (レス) id: b9832c7634 (このIDを非表示/違反報告)
リリィドール*ガチめに低浮上(プロフ) - 更新が停止となっていて、すごく衝撃を受けていた者です笑。また更新が再開されるとのことで、すごく嬉しいです!作者さんのペースで無理しない程度に頑張ってください!応援してます♪ (2019年7月15日 0時) (レス) id: e60ca59755 (このIDを非表示/違反報告)
なまむぎ。 - このお話とても大好きです!更新頑張って下さい! (2019年4月22日 20時) (レス) id: 51d094ad46 (このIDを非表示/違反報告)
Dream★World(プロフ) - この作品好きなので、移転先教えてください……!!! (2019年2月3日 18時) (レス) id: 093bdce514 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:空弥 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年7月29日 0時

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