変人演者の備忘録【演技が全ての世界で】

抱く側と抱かれる側(リューグナーくん) ページ4

「ねぇ、抱いてよ。カイ」

「あのなぁ……」


俺は目の前で悪戯に舌を出した男に、盛大な溜め息を吐いた。

この男はリューグナー。

先日現場で「そういう仕事」をした後、俺は目をつけられてしまったらしく、かなりの頻度でこうやって家にやって来る。


「……今週何回目だ、お前」

「今週はまだ三回目だよ」

「よし帰れ」


ばたん、扉を閉めた。

こういう奴は関わらないに限る。

折角今日は、映画でも見てのんびりしようと思っていた計画が台無しだ。

一匹の猫をメインにしたハートフルストーリーは、他の人間と一緒には見れないからだ。

そう、俺のメンタル的に。


「……無視だ、無視」


こう呟いて踵を返す。

煙草に火をつけて口にくわえたとき。


ピンポーン。

もう一度鳴ったインターホン。

しかも今度は近所迷惑になるくらい連打してくる。

暫くは無視を試みていたが次第にそれも耐え切れなくなって。


「あーもううるせぇんだよ！」


ばぁん、と音を立てて扉を開いた。

男は悪びれもせずににこにこと笑みながら、妖艶に舌をまた出した。


「だってカイ、するときはタチに特化してる訳でしょ？

抱かれたいと思った時は、カイが一番頼みやすいんだよね」

「特化してるって言うな。

好きで好きでもねぇやつ抱くわけじゃ無いんだよ。

そもそも頻繁に男に抱かれることに羞恥とかないのかテメェ」


じっとりと睨み一撃を放つ。

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