アルスラーン殿下に、一生の忠誠を誓います。【アルスラーン戦記】♯3♯ (ページ13)

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「母上がルシタニア王に結婚を迫られている……！？」

その予想外な情報に、口元に手を寄せ、悩み始める殿下。

「一刻も早く、母上をお助けせねばならぬ……！」

そう焦っている殿下に、ファランギース殿が声をかける。

「殿下。お焦りになりますな。ルシタニア国王がお母上との結婚を望んだところで、お母上はルシタニア人から見れば異教徒。おいそれと周囲が認めるはずもございません。近々にどうという事態はおこらぬと存じます」

「ファランギースの言う通りです。結婚を強行すれば、とくに聖職者共の反発を呼びましょうし、それに、野心のある王族や貴族がからめば内紛が生じるかもしれません。あえて強引な真似はできますまい」

「殿下にとってはご不快でしょうが、そのような事情であれば王妃様の身が害される恐れは少ないと思われます。国王陛下にしても、とにかく、生きておいでのようですからお助けする機会はあるでしょう」

という、ファランギース殿、ナルサス殿、ダリューン殿の大人3人に言われ、まゆをさげながら、殿下は返事をした。

「……うん、そうだな。うん。いずれにしても我々は少数すぎる！とにかく早く味方を増やしたい！どうすればいい？ナルサス」

殿下の真剣な目を見て、ナルサス殿は答える。

「完全な正義というものを地上に布くのは無理でしょう。ですが、今日(こんにち)までのパルスの国政やルシタニアの暴虐より、ましな政事が存在してもよいはずです。

条理に合わぬことをなくすことはできなくとも減らすことはできるはずです。味方を増やすには殿下が将来、そうなさることをパルスの民に知らしめることです。

王位の正統は血にはよらず、政治の正しさによってのみ保証されるのですから。失礼ながら、王者たる者は策略や武勇を誇るべきではありません。それは臣下たる者の役目です」

その言葉を聞き、恥ずかしくなったのか頬を赤く染める殿下。そして、ナルサス殿は1口コップの中のものを飲むと、もう1度喋り出した。

「まず、殿下の目指されるものを明らかになさいませ。それが叶うよう我らは、協力させていただきますから」

その言葉を聞き、私の方へと振り返る殿下。

そんな殿下に、私はうなづいてみせた。