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そして、戦の前日。
殿下に私も出陣することを告げた。
殿下は驚き、絶対にダメだ。と、頑なに断っていた。
だが、アンドラゴラス陛下の許可も得た、と言ったら、黙り込んでしまった。
当日となった。
カーラーン殿が、殿下に話しかける。
「緊張しておいでですかな、殿下」
「カーラーン……」
私は、カーラーン殿が嫌いだ。
裏切るから。でも、こんなことを言えば、私の身が危なくなることくらい分かる。だから、言えない。
気づかれぬよう、そっとカーラーンを睨んでいると、空からアズライールが羽ばたいて来た。
「おかえり！楽しんできたかい？」
アズライールを見た途端、笑顔になる殿下。やばい、可愛すぎて萌死ぬ。
アズライールが肩に乗った途端、疑問を感じる殿下。
「羽根が湿っている……。アズライールが飛んできた方向……。カーラーン、アトロパテネの方から戻ってきたアズライールの羽根が湿っている」
「……なんですと」
「ここはこんなに晴れているのに、おかしくないか？大丈夫だろうか？」
と、空を見上げる殿下。
後ろから、兵たちの声が聞こえる。その中に、殿下に失礼のある事をいう声も。
「もう1度、偵察に行ってまいります」
「私も行きます」
お前なんか信用出来ねーんだよ。……おっと、失礼。
「大丈夫です。それより、殿下のお側におられてください。あなたは臣下なのですから」
……チッ。そう来たか。
「分かりました。それでは、よろしくお願いいたします」
「アズライール。お前はキシュワードの所に戻れ」
殿下がそう言うと、首を傾げるアズライール。
「大丈夫だよ。私は大丈夫。天候が崩れるかもしれないし、もうすぐ戦になるからお帰り。……といっても、私なんかよりお前の方が戦場慣れしているか……」
そう言うと、アズライールは羽根を広げ、宙に浮いた。
「東だよ。キシュワードは東方国境の"ペシャワール城塞"だ」
アルスラーン殿下は、アズライールが飛んでいった方向を見ながら、不安そうに呟いた。
「……大丈夫……」
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作者名：真希 | 作成日時：2017年8月21日 18時
