リアリストの葛藤【２】 (ページ6)

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56 打合せ-2 ページ6

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「いやいや私そういう打ち合わせとかは無理ですよ！！」

社長「誰が打ち合わせ出ろって言った？あんたみたいな口下手じゃ無茶振り通されるのがオチ！」

「んぇぇじゃあなんで」

確かに営業経験のない私では打ち合わせに行ったところで受けていい仕事の相場も分からないし、多分無茶言われても「頑張ります」とか言っちゃう気がする。

社長もそれを分かってるなら何故私を連れていくのか。

若干私を罵りつつ否定する社長をじろりと見つめる。

社長「私は打ち合わせだけど、あんたはダンスの見学と、振り付けの把握。
　アーティスト達と会ってきて」

「そ、そんなの映像観たら良いじゃないですか」

社長「へぇーじゃあ画集があれば美術館行かないの？月2で行ってる美術館の料金経費出さないわよ」

「ど、同行させていただきます…」

社長「よろしい」

ダンス映像に合わせてアニメーションを構成するなら動きの確認は必須。

勿論映像でも把握は出来るけど、実際の躍動感は目の当たりにしない事には表現が難しい。

社長の言う通り、画集があれば美術館へ行く必要がないのかと言われるとそれはNOだ。

配色も印刷とは違う、絵の具の厚みなんかも実際観るのとでは全く変わる。

でも…

「行きたくない…」

社長「なに、そんな嫌なの？いい身体の男いっぱい見られるのに」

「私の事なんだと思ってるんですか」

ポートフォリオの人物画を全部上裸の男で提出して以来ずっとこのネタでいじられてる。

得意だから出しただけで、そんなそれを餌に生きているほどの異常さは無いつもり。

質感を追い求めた結果講師からは「よく観察出来ている」とお褒めの言葉をいただいた。まぁ同級生からは「生々しくて直視しづらい」と言われたけど。

社長「ま、とにかく来週行くからそのつもりでね」

「はぁい」

再度資料を確認すると、ver違いはボーカル三人・パフォーマー4人・4人・5人の4パターン。

パフォーマーの組み合わせはまだ未定との事だが、振り付けもそれぞれ少しずつ変わるらしい。

少なくとも4人とは会わないといけないのか。

社長「知り合いでもいるの？」

「あー、はい」

余りに渋る私を不思議に思ってか彼女が尋ねる。

特別隠し立てする必要もないし素直に答えたが、選択をミスった気がする。

うわぁ、うわぁすっごい笑顔…いいネタ仕入れたといわんばかり。

社長「詳しく聞かせなさいよ！！」

「いやです～～！！」

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