39、ネックレス ページ39
虫の声だけが聞こえる静かな中、不意に桜哉が私に手を伸ばしてきた。
そして、そのまま私の持っていた指輪のネックレスをそっと握った。
「良ければお付けしましょうか？お嬢様…
なーんて、冗談冗談！」
『…お願い出来ますか？』
手を伸ばしてから、また手を引っ込めた桜哉に微笑んで指輪のネックレスを私は差し出した。
勿論いつもの冗談のつもりで言ってきた桜哉は一瞬驚いた顔をする。
そして…私の言葉が冗談じゃないと気づいた桜哉は頭を少しだけかいてボソッとなにかを呟いた。
「……やっぱ雪はズルいよな……」
本当に、聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた桜哉は、深呼吸をしてから真顔になって私を見つめてきた。
何だか緊張した空気が流れ、私も桜哉に真似て深呼吸をすれば彼は笑った。
これで少し今の緊張した空気が消え、桜哉は小さく笑うと指輪のネックレスを受け取ったのだ。
今は公園にいるのに、何だか違う場所にいるように思えて私は少し目を伏せてみた。
聞こえてくる、夜の音。
何も聞こえない、夜の音。
そして
「……じゃあ雪、後ろ向いて」
そう小さく囁いた桜哉に、私は頷いて彼に背を向けた。
すると首に冷たい物が触れ、それと同時に桜哉の冷たい手も触れたのだ。
ゆっくりとした時間が流れ、桜哉は私の首をなぞるようにネックレスをつけた。
私の首元で、指輪が光る。
それを見て、私は振り向こうとした。
しかし
.
『！？』
.
振り向こうとした私の目を、桜哉は不意に手で翳してきた。
冷たい手が心地よく私の目に触れる。
そして、そのまま私は暗闇の中桜哉から話をされた。
「雪、雪は最近俺に隠してる事とかって……ないよな？」
『…え？』
暗闇の中、桜哉の悲しそうな、試すような声が聞こえる。
私はそんな中、頭にクロを思い浮かべた。
桜哉にはどんなことだって話しているし、嘘をついたりなんかしないから…唯一隠している事がすぐ頭に浮かんだのだ。
「…ない？」
再び、聞こえる声。
私はそれに、小さく呟いた。
.
『…信じられないかもしれないけど、拾った猫が吸血鬼だったとか…』
馬鹿にされる、それを覚悟で冗談のように呟けば、なんといきなり塞がれていた手が私から離れ…桜哉に正面を向かされたのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜衣(プロフ) - 連投失礼いたします。17話まででべルキアが椿のことを「椿」と言っていることが気になりました。以降は直されているみたいなので、ご報告だけしておきました！ (2017年4月26日 18時) (
レス) id: f61c514b96 (このIDを非表示/違反報告)
怜衣(プロフ) - 初めまして！読ませてもらっているのですが、少し気になることがありまして...。べルキアの椿の呼び方は、つばきゅんではないでしょうか？ (2017年4月26日 18時) (レス) id: f61c514b96 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - ユイさん» ユイさんへ♪お返事遅れてすいません！いつも見てくださりありがとうございます！頑張ります！ (2016年9月6日 21時) (レス) id: b0ed99a4e9 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - いつも見てます。これからも頑張ってください!! (2016年9月4日 14時) (レス) id: 20080c7ffa (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 主夫LOVEさん» 主夫LOVEさんへ♪ほんとですか！嬉しいですありがとうございます！ (2016年9月4日 0時) (レス) id: b0ed99a4e9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪 | 作成日時：2016年8月18日 22時
