第一話 ページ3
私はたしかに死んだはずだった.
数年前にとある病気にかかって、どの病院の先生にも奇跡が起きるかぎり治る見込みが一切ないと言われるほどに体の神経がズタズタにされる原因不明の病気だった。
私はまだ若かったからか知らないけれど、周りの人たちは私を少しでも長く生きれるようにと大学病院に入院させてくれた。足の先から段々と動けなくなり、死へと向かっていく体に恐怖を覚えながら、病室の窓からずっと四季の移り変わりをみていた。
そんな日々をおくっていた私に看護師の人が可哀想と思ったのか沢山の楽しいことを教えてもらった。その看護師の人は世間的にヲタクと呼ばれる人らしく、沢山の本にゲーム機やアニメのDVD をくれた。そのおかげで自分の知らないことをたくさん知れた。
それはもうこんなのは知らなくていいのではないかということまでしれた。
好きなものもたくさん増えた。その中でもこの世界では絶対にありえないような能力を使ってバトルするもの、願望機をめぐって歴史上の人物を召喚したり色んなものを擬人化させるゲームやアニメなどが特に好きだった。
真っ白だった私の世界が一気にバラ色に変わった。
だけどそれもつかの間の幸せだった。急に病期の進行が早くなっりすぐに頭以外全身が動かなくなった。そのあとは体に数えきれないほどの管を繋がれた。
手を動かすことも叶わなかったからもうゲームも本も読めなくなって、YouTubeで音楽や実況を流してもらってずっとそれを眺めたり歌ったりしているだけだった。
食べ物の味も感じなくなって、口が動かなくなって、目が開けられなくなって……それからのことは何も覚えていないがもう死んでしまったのだろうと私は思う。
けれど今はどうだろう。燃える炭のにおいに打たれる鉄の音、覚えのない男の大きな背中。そしてほのかに温かみを感じるこの体。
すでに死んだはずの私にとっては絶対にありえないことだらけだった。
だが私は完全に把握してしまった。自分が刀になっているということに。刀身を見る限り太刀っぽい感じがした。
これからワクワク刀剣ライフが始まるんだ。
今の私の姿はどうやら人魂のようだった。
そこら辺の妖怪から教えてもらったが私達刀剣は完全な人型になるためには百年の月日はもちろんのこと、号をつけてもらう、自分は“自分”だということを沢山の人に認知される必要があるらしいのだ。(なお私は今話せる口がないので一方的に話された)
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作者名：kapusan_dao | 作成日時：2022年6月15日 23時
