第七十二話 ページ28
そらるさんに、付き合ってくれと告白された。
私はそれ程驚かなかった。
そらるさんには悪いが、最初に好きだと言われた時から気づいていた。
これは所謂告白というものなのだな、と。
とぼけたフリをしたのはどれだけ本気なのか確かめるためだ。
そらるさんがこんな面前で巫山戯るなんてありえないけど、こんな無職でどうしようもない私に好きだ、なんて信じられなかった。
実際、そらるさんとは二人ではあまり喋ったことはなかった。
大体いつも、彼の隣にはまふがいた。
しかし、彼は本気で私に告白していた。
抱き締める彼は小刻みに震えていた。
自分の背中で、彼の決意が感じられた。涙が滴っているような気がした。
私だって、そんな彼に応えたい。いいですよ、と安心させたい。
だけど。
申し訳なくも、私は恋というものに疎かった。
ライブの出演者の中で、特別気になるとか、好きだとか思う人は居なかった。というか、そんなことはちっとも考えちゃいなかった。
ここで軽くOKサインを出してしまっては、人生で一番の決断を下してくれた彼に失礼じゃないか。
私は、一旦彼から離れて、深く、頭を下げた。
「…ごめんなさいッ」
「ッ…」
今彼はどんな事を思っているだろうか。
こんな事を考えている暇は無いのに、ぐるぐると思考が頭を駆けめぐる。
泣いているだろうか。怒っているかもしれない。
いつまでも自分勝手な私を。
でも。ここで受け入れることは、突き放すことよりも彼を傷つけてしまうと思った。
彼がどんな事を考えているのか、ということを覚悟して、私はスッと顔を上げた。
彼は、私の考えとは相反し、笑っていた。
「…そっか。ありがとう」
その笑顔は、偽りない、本当の笑顔だった。
すっかり安心した、優しい笑顔だった。
そんな彼に、何故か私の方が目頭が熱くなってしまう。
さっき流した涙の跡を追って安堵の涙が伝う。
「なんでAが泣いてるの…」
「私…友達になりたいです…でも……そんな漫画みたいには…行かないですよね…？」
「そりゃ、今俺はそれ相応のショックは受けてるけど」
「ごめんなさい…」
「まぁでも、それがAの答えなら、俺は受け入れる。…それが伝えられてよかった」
そらるさんはニコッと微笑みかける。
内心どう思っているかは分からないが、彼はそれ程怒ってはいないようだった。
私もそんな彼につられて、涙でぐちゃぐちゃになった顔を、咄嗟に笑顔に変えるのだった。
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あ - 「つゆ知らず」ではなく「つい知らず」では？ (2019年11月23日 19時) (
レス) id: a5d39e3f52 (このIDを非表示/違反報告)
お茶丸。(プロフ) - 琴葉さん» コメントありがとうございます！！続き……どうなるんでしょうね！！(考えてない)後付けが得意なのでどうなるやらって感じですが、楽しみにして下さっている方がいるから頑張れるってやつです！私のモチベにも繋がるので、これからも応援よろしくお願いします！ (2018年9月24日 21時) (レス) id: 172c3d86d3 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉 - 続きが楽しみすぎる…！ (2018年9月24日 19時) (レス) id: cc1af6d8b8 (このIDを非表示/違反報告)
お茶丸。(プロフ) - やさん» コメントありがとうございます！！いや、そんなこと言ってくださるとは…ありがとうございます！完結…今のところしそうにないですがいつかしなきゃならないんですよね…(-＿-)頑張ります、応援よろしくお願いします！！ (2018年6月30日 22時) (レス) id: 172c3d86d3 (このIDを非表示/違反報告)
や(プロフ) - はじめまして。夢主さんの自分らしくて可愛いところも、歌い手さん方の優しいところも全部全部ドツボの作品です、、！完結まで待ってます（＾_＾） (2018年6月30日 21時) (レス) id: 8d18ba62e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お茶丸。 | 作成日時：2017年12月26日 10時
