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夢を見破る *8 ページ8

私は光さんの姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くし、夕方の町内放送が流れてようやく誰もいない家に入り階段を登って2階の自室を目指した。


ハァ……


誰にも聞こえやしない大きなため息を一人吐く。

慣れない高校生活
オカ研から聞いた悪魔のこと
極め付けは光さんの愛してよ宣言

精神的な疲労がこれでもかと蓄積し着替えもままならず私は制服のままベッドにダイブした。

うつ伏せで倒れ込んだ私の体をバフっと大きな音を立てて大好きな布団が受け止めてくれる。

やけに重く感じる体はまるで鉛の様で、このままどこまでも沈んでいく様に錯覚する。

沈む体の感覚と同様に自分の視界も徐々に狭まっていくのが分かる。



(少しだけ休もう…)



疲労から来る眠気に耐えられず、私は争うことなく目を閉じてそっと意識を手放した。







「…A……A!」





誰かが私を呼んでいる…



暗闇の中、一筋の光から聞こえる声に




微睡んだ意識の中で手を伸ばす



この手はどこに向かって伸ばしていて
そして私は一体何を掴みたいのだろう…



意味のない自問自答を繰り返しながら、それでも手を伸ばした。



やがてその手は光の中の何かに触れ、グッと握られ引っ張り上げられていく。



引っ張られる感覚と同調して意識も光に引っ張られ




あぁ、眠りから覚めるんだ。




そう直感した。





「おはよう、A」



目を開けたその先にいたのは見慣れた真っ赤な髪の毛で。
どんなに寝ぼけていても声だけで誰だか分かる。


「さかた…さん…?」


名前を呼ぶと坂田さんは微笑み、私の手を自分の頬に擦り寄せて何やら嬉しそうにしている。



寝起き特有のぼんやりとした意識の中、体を起こすと、




「おはよ、俺の眠り姫様」

近づいてきて私の頭を撫でる志麻さん。



「おはよーちゃーん、よく寝れた?」

読んでいた本を閉じてヒラヒラと手を振るうらたさん。



「おはようございます。お目覚めにセンラ特製、蜂蜜入り紅茶はいかがです?」

いつもの穏やかスマイルを浮かべているセンラさん。



それは、まるで、ありふれた日常の様に
太陽が登って沈むくらい、地球が丸い事くらい自然に



そこに彼らが存在している。







だから、一瞬忘れていた。








これが、この世界は夢だって事を。










「あれ…なんで私(ここ)にいるの…?」

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設定タグ:浦島坂田船 , 歌い手 , うしさせ   
作品ジャンル:ファンタジー
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悠永@D姫終焉章連載中(プロフ) - Famiraさん» コメントありがとうございます!😊 この頃更新が中々出来ずに大変申し訳ございません。頑張って続きを書いていくのでどうか最後までお付き合い頂けたらと思います! (2023年4月17日 16時) (レス) id: 41d5883f51 (このIDを非表示/違反報告)
Famira - とってもおもしろいです!!続きが気になります!応援してます! (2023年4月12日 19時) (レス) id: 1bc63f0a03 (このIDを非表示/違反報告)
悠永@D姫終焉章連載中(プロフ) - 笹音さん» 嬉しいコメントをありがとうございます😭💕期待にお応えできる様になるべく更新頻度を落とさずに頑張りますね (2023年4月4日 20時) (レス) id: 41d5883f51 (このIDを非表示/違反報告)
笹音(プロフ) - めっちゃ気になるぅ!早く続きをみたいです! (2023年4月3日 18時) (レス) @page12 id: bd99ba81f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠永 | 作成日時:2023年2月7日 11時

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