夢と傷跡 *2 ページ31
人間の子は手入れのされていないボサボサの髪に
服と名乗るには程遠いボロボロの布を纏って、頬は薄汚れ、本来美しく輝くはずのエメラルドグリーンのその瞳は輝きを無くし濁って焦点の合っていないその目で虚空を見つめていました。
その姿に昔の自分を重ねたディアブラは無意識のうちに手を伸ばし
「うちに来る…?」
そう尋ねていました。
差し出した手のひらを見つめる人の子の表情は相変わらず無表情で問いに対しての
だけどその代わりに、小さな手がおずおずと差し出され
やがて人の子は
それが答えだと言わんばかりに。
繋いだ手を引いて魔界までの暗闇を2人は歩く。
初めて他人と繋いだ手の温もりは心地よくて
きゅっと力を込めると握り返してくれる
一方的じゃない手の強さが無性にくすぐったくて
じんと胸に広がる温かさに彼女は
これが”愛おしい”という感情かと気持ちに名前をつけました。
「今日から貴方は私の
屋敷について少年を風呂に入れ丁寧に洗い、
食事を与え、一緒のベッドに入ってそう告げる。
“かぞく”とその言葉に反応し少年の瞳に一瞬だけどキラリと光が灯った、そんな気がした。
それから幾年が過ぎて、ディアブラは収穫祭の度に捨て子を見つけては屋敷へ連れ帰るものだから
いつの間にか眷族は合計で4人になっていました。
最初に拾って来た眷族は新しい子が増える度に何かを言いたげに頬を膨らませいじけるような素振りを見せていましたが
数日もすれば兄貴分としてしっかり下の子の面倒を見て、
そんな兄貴分を下3人は敬い、慕い、時に喧嘩をしながら
4人は日に日に逞しく成長していきました。
「うらさん!パン食べんのなら俺にちょーだい!」
「はぁ!?ちげーよこれは最後に食いたくて残してんの!誰がお前にやるかってんだバーカ!!!」
「おい!飯食ってる時に暴れんなって!スープが溢れる!」
「まぁまぁ、さかたん、僕の半分分けてあげるから落ち着いて」
今までは独りぼっちだった食卓が
みんなで寝るには少し窮屈なベッドが
広い屋敷の何処にいても聞こえる4人の笑い声が
家族が出来てこんなにも賑やかになったことが。
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悠永@D姫終焉章連載中(プロフ) - Famiraさん» コメントありがとうございます!😊 この頃更新が中々出来ずに大変申し訳ございません。頑張って続きを書いていくのでどうか最後までお付き合い頂けたらと思います! (2023年4月17日 16時) (レス) id: 41d5883f51 (このIDを非表示/違反報告)
Famira - とってもおもしろいです!!続きが気になります!応援してます! (2023年4月12日 19時) (レス) id: 1bc63f0a03 (このIDを非表示/違反報告)
悠永@D姫終焉章連載中(プロフ) - 笹音さん» 嬉しいコメントをありがとうございます😭💕期待にお応えできる様になるべく更新頻度を落とさずに頑張りますね (2023年4月4日 20時) (レス) id: 41d5883f51 (このIDを非表示/違反報告)
笹音(プロフ) - めっちゃ気になるぅ!早く続きをみたいです! (2023年4月3日 18時) (レス) @page12 id: bd99ba81f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠永 | 作成日時:2023年2月7日 11時