夢を見破る *27 ページ27
—side:坂田—
懐かしい写真を見てるA。
そこに写る俺達は皆一様に硬い表情を浮かべていたけどただ1人だけは変わらない笑顔で微笑んでいた。
俺の記憶の中の主人様はいつもこの写真の様に優しく穏やかな笑顔で俺の名前を呼んでくれたっけ。
あぁ、どうしてこんな事になってしまったんだろう。
どうしてあの時止められなかったんだろう。
俺が未来を知っていたら
俺が強引にでも着いて行っていたら
“あんなこと”にはならなかったんだろうか…
そんなことを考えていたら
自分の無力さが虚しくて、歯痒くて
ズキズキと痛む胸に無抵抗なAを閉じ込めた。
抱きしめた小さな体から伝わる温かい体温とドクドクと音をたてる心臓に”あぁ、この子は今俺の胸の中でしっかり生きている”と実感できてその事実に酷く安心した。
もう離さない
どこにも行かせない
2度と誰にも奪わせない
そんな思いが溢れて無意識に腕に力が入っていたのだろう。
ハッとして引き剥がされたセンラの後ろに見えたAは蹲り激しく咳き込んでいた。
伸ばす手を弾かれ、鋭く冷たい視線で俺を見据えたセンラは
“お前は何度その暴走でAを殺そうとしたら気が済むんですか”と俺に問いかける。
その言葉に、俺は今しがた自身で感じていた”命”を奪いかねない行為をしてしまったのだと気付いてゾッとした。
思わず落ちてしまった視線。
気を抜けば溢れだしてしまいそうな涙を引っ込めるために拳を握り勢いよく顔を上げて俺は告げた。
「そ……やな、俺…Aに辛い事ばっかりして…謝っても済む問題じゃないよな…」
“でも、ごめん”と呟いた俺は返事を待たずAとセンラに背を向けて部屋を後にする。
廊下を宛もなく進み涙腺の限界を感じた俺は壁を背もたれにしてその場にズルズルと座り込んだ。
目を閉じてAの事を考える。
開けた視界の先で最後に見えた彼女は俺の言葉に目を見開いて心配そうな顔をしていた。
俺に傷つけられたお前がなんでそんな顔すんねん…。
この期に及んで他人の心配すんなや。
後悔、懺悔、愛、いろんな感情に押し潰されて苦しい。
こんな事なら…
「坂田?お前、こんなところでなにしてんねん。センラさんは?」
顔を見なくても聞いただけで誰だか分かる。
鼻を啜り、隠しきれない涙声で名前を呼ぶと
まーしぃはため息をついた後”また泣いてるん?”って優しく俺の頭を撫でた。
369人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
悠永@D姫終焉章連載中(プロフ) - Famiraさん» コメントありがとうございます!😊 この頃更新が中々出来ずに大変申し訳ございません。頑張って続きを書いていくのでどうか最後までお付き合い頂けたらと思います! (2023年4月17日 16時) (レス) id: 41d5883f51 (このIDを非表示/違反報告)
Famira - とってもおもしろいです!!続きが気になります!応援してます! (2023年4月12日 19時) (レス) id: 1bc63f0a03 (このIDを非表示/違反報告)
悠永@D姫終焉章連載中(プロフ) - 笹音さん» 嬉しいコメントをありがとうございます😭💕期待にお応えできる様になるべく更新頻度を落とさずに頑張りますね (2023年4月4日 20時) (レス) id: 41d5883f51 (このIDを非表示/違反報告)
笹音(プロフ) - めっちゃ気になるぅ!早く続きをみたいです! (2023年4月3日 18時) (レス) @page12 id: bd99ba81f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:悠永 | 作成日時:2023年2月7日 11時