夢を見破る *13 ページ13
志麻さんが光さんの事で怒っているのは火を見るより明らかだった。
どう伝えれば、どうしたら志麻さんの怒りを沈められるのか必死に模索していると彼は先程まで掴んでいた髪から手を離し、今度は私の頬を片手で乱暴に掴みあげ顔を無理やり上に向かせる。
上がった視線の先に驚くほど無表情な志麻さんと目が合う。
「…何とか言ったらどうなんだよ」
何とか言えと言うが、今の私は頬を掴まれていてろくに話せるような状態では無い。
この状況でどうしろというのだと内心逆ギレに近い心境で戸惑っていると、志麻さんの手首に他の誰かの手がポンっと乗せられる。
「まぁまぁまーしぃ、落ち着いてください。女の子に乱暴しちゃあかんよ。」
志麻さんを止めてくれたのはセンラさんだった。
センラさんに笑顔で窘められ、志麻さんは小さく舌打ちをして私の頬から手を離す。
“大丈夫ですか?”と聞いてくれたセンラさんにお礼を言おうとして息を飲んだ。
私に向けられたセンラさんの表情も志麻さんと同様に恐ろしいくらい無表情だったから。
何も言えない私に貼り付けたような笑顔で”まーしぃがごめんなぁ”と平謝りをした後、”でもな”と接続詞を付け加え淡々と彼は語り出す。
「ねぇ、A?僕ら、これでも抑えてるんですよ?僕らの知らないところでAに触れられる男がいるなんて想像するだけで嫉妬で今にも気が狂いそうなんです。」
あくまでいつも通りの笑顔、声色、淡々と話す口調。
しかし彼からは隠しきれない怒り、悲しみ、嫉妬、悦の感情が具現化して見えた。
「だから、全員で話し合って決めました。Aをもう離さないって。」
頬に何か暖かいものが伝う感覚。
訳も分からず涙が流れていることに気付く。
これはどの感情の涙なのだろうか、自問自答しても答えは出なかった。
「なんで泣いてはるん?あぁ、嬉し泣きってやつですか?フフ、そんな風に泣いてくれるんだったらもっと早くこうするべきでしたね。ねぇ、A?」
抗えない強烈な睡魔に襲われて、足の力がガクッと抜ける。
この感覚に覚えがある気がして必死に記憶を探り1つの答えに直面する。あぁ、これは悪魔の”誘惑”だ。
瞼が閉じる寸前に見えたセンラさんの瞳は綺麗な弧を描きシトリンの輝きを放っていた。
“これからは、ずっとずーーーっと一緒ですよ”
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悠永@D姫終焉章連載中(プロフ) - Famiraさん» コメントありがとうございます!😊 この頃更新が中々出来ずに大変申し訳ございません。頑張って続きを書いていくのでどうか最後までお付き合い頂けたらと思います! (2023年4月17日 16時) (レス) id: 41d5883f51 (このIDを非表示/違反報告)
Famira - とってもおもしろいです!!続きが気になります!応援してます! (2023年4月12日 19時) (レス) id: 1bc63f0a03 (このIDを非表示/違反報告)
悠永@D姫終焉章連載中(プロフ) - 笹音さん» 嬉しいコメントをありがとうございます😭💕期待にお応えできる様になるべく更新頻度を落とさずに頑張りますね (2023年4月4日 20時) (レス) id: 41d5883f51 (このIDを非表示/違反報告)
笹音(プロフ) - めっちゃ気になるぅ!早く続きをみたいです! (2023年4月3日 18時) (レス) @page12 id: bd99ba81f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠永 | 作成日時:2023年2月7日 11時