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「・・・ねえ」
「はい?」
あれからひとしきり騒いで疲れたのか、海人はソファーの上で横になって眠ってしまった。
脱ぎ捨てられた海人の上着をそっと掛けてやれば、いきなり寝返りを打つものだから思わず動きを止めた。
呼び掛けられたきり紫耀からは何も言葉が続かない。
彼の方に顔を向ければ、頬杖をついたままその視線が注がれていた。
「二人でベタベタくっ付いてるの、海人の彼女は気にしない訳?」
「え・・・」
そう言われて初めて、頭を鈍器で殴られたような感覚が走った。
これまでに考えた事のなかったそれに意識が揺れる。
海人にもそれなりに恋人は致し、私にも居た事はあった。
お互いに恋人が居ても家に行き来し、ダラダラと過ごす事なんてざらにあった。
大変不味いのではないか、と今更ながらに思い始める。
「聞いた話だと結構な頻度でお互いの家行き来してるみたいだから」
「そう、ですね・・・」
そうか。
ゆっくりと「嫉妬」の二文字が脳内に浮かんだ。
「普通は嫉妬とか、するのか」
「普通は?」
勢いのまま口走ってから、息を呑んだ。
こてん、と首を傾げる姿が何だかかわいいな、なんて思ってる場合ではない。
「今のなし。忘れてください」
「やだよ。忘れない」
焦り過ぎでしょ、と悪戯を思い付いたように笑んだ紫耀に、くらりと今度は本当に目眩が起きるようだった。
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作者名:かる | 作成日時:2020年7月29日 0時