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ぼんやり考えていると、背中に重みが掛かる。
こんな事をするのは海人くらいだからと、押し返すように反った。
「ほんとつまんなーい」
「重いんですけど」
「そんな事ないよ。俺軽いもん」
「何言ってんの?」
「真顔やめて!」
「ふふ。冗談だって」
おしくらまんじゅうのような体勢になりながら、軽口を叩き合う。
海人との穏やかなこの関係性がひたすらに心地良かった。
ふ、と小さな笑い声が漏れたのを聞き逃さなかった。
海人と背中合わせになりながら声のした方を見やると、紫耀の口元が緩んでいた。
優しく笑う紫耀を目の当たりにして、瞬間的に動けなくなる。
この人はこんな顔で笑うような人だったかと。
「ほんと仲良いな」
「羨ましいでしょ」
「・・・いや」
「今、微妙に間があったからね?」
「幼なじみって何処もそんな感じなの?」
「あ、無視した!えー?分かんないけどそれぞれなんじゃない?やっぱり」
「・・・そうだよな」
呆気に取られたままの私の耳に、二人の会話がすり抜けていく。
急に喋らなくなった私に疑問を持ったのか、海人に「どうしたの?」と顔を覗き込まれた。
そこでようやく意識が浮上したかのように、全身が動くようになった気がした。
「ううん。何でもない」
ちょっと目眩がしただけ、と適当な嘘を並べた。
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作者名:かる | 作成日時:2020年7月29日 0時