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あれから数日が経った。
何をするにも集中力が持続せず、数分としない内に手が止まってしまう日ばかりが流れていった。
それでも仕事はこなさなければならない訳であり、今日もまた無視質なパソコンの画面と向かい合っていた。
「ねえ。大丈夫?」
あまりに私の手が動いていなかったのか、友人が訝しげな視線を送ってくる。
「あ、うん。大丈夫」
「あんた最近変だよ。何かあった?」
観察眼が鋭いとはこの事を言うのだろうか。それとも私が分かりやすいのだろうか。
あったといえば心当たりがあり過ぎる程にあったが、職場で気軽に話せる内容でもないし、誰かに言う事もこの先ないようにも思う。
「何もないよ」
普段通りに答えられただろうか。
ここ最近は、誰かと対話をする際にいつも通りにと考え過ぎるからだろうか。上手く会話のキャッチボールが続かない気がしていた。
眉をひそめた友人はもしかして、と声のトーンを数段落として言った。
「永瀬くんと喧嘩でもした?」
「・・・何で?」
「高校の同級生だったんでしょ?絶対何かあるって専らの噂だよあんたたち」
そんな事になっていたのか。
会社で廉と関わる事はほとんどない為に油断していた。
きっと廉が話したのだろう。
噂というものは尾ひれががついて広がるものだ。
みんな噂話が好きだな、と他人事のように考えていると、肩に手を置かれ
「相談くらいは乗るからさ」
とそれきり友人は仕事に戻っていった。
あの日から廉とは話をするどころか目も合っていない。
廉の座るデスクの方へと目を向ける。
かなり距離がある為、彼の後ろ姿が小さく見えただけだった。
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作者名:かる | 作成日時:2020年7月29日 0時