addiction (ページ31)

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目を腫らしたまま縮こまったように眠るAの髪を撫でながら考える。

『助けて欲しいなら素直にそう言えばいい』

そう口にした自分に対して、よくそんな事が言えたものだと俯瞰しているような気分になった。

ただ彼女の手を離したくなかった。

手を離せば遠くに行ってしまいそうな、消えてしまいそうな彼女は、とても危ういもののように見えた。

「人を好きになれない」と涙を流す彼女は許しを乞う幼子のようだった。
綺麗で、神聖なものを見ているようだった。
それと同時に、彼女の瞳から零れ落ちる涙に、自分の中の箍が外れそうになった。

彼女の涙を誰にも見せたくないと思った。

それならばいっそ
自分の前でだけ泣いていればいい。

何処までも強欲だな、と笑ってしまう。

何か一つを望んでしまえばそこからは蟻地獄のように、欲しいものは永遠と増していくばかりなのに。

望んではいけないのに。

我ながら、何時まで自分勝手な行動を取れば気が済むのだろう。

口から零れたのは、水分を搾り取られたような乾いた笑みだけだった。

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