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とりあえず、と差し出されたバスタオルに身をくるんで暖かいコーヒーを啜った。
久々に訪れた紫耀の部屋は相変わらず生活感がなく、ガランとしていた。


「雨が降ってきたから帰ってきたけど丁度良かった」


とカップを手にした紫耀はソファーに腰を下ろした。
ソファーの上で伸びをする紫耀はまるで猫のようだ。


しばらくお互いに何も話さなかった。
何から話せば伝わるのか分からなかったし、分かって貰えるとも思えない。
悶々と、また負の感情に苛まれてしまうような感覚に陥る。
言い難そうにしていた事が伝わったのか、先に口を開けたのは紫耀だった。


「言いたくなったら言えばいいから」


優しく。
けれど焦られる事のないその声色に、酷く安堵が広がった。


気が付けば、誰にも言うつもりのなかった私の問題を口にしていた。





「どうすれば良かった・・・?」


紫耀に答える事など出来ないような問いを投げ掛けていた。

もう何が間違っていたのかも分からない。
今までの行動全てが間違っていたのだろうけれど、他に寂しさを埋める方法なんて思いつかなかった。
こんな事、問い掛けても意味はないのに。

懇願するような目で紫耀を見上げると勢いよく腕を引かれた。
眼前にあるのは彼の肩口だった。


「助けて欲しいなら素直にそう言えばいい」


Aを見放したりしないから、と背中に回された腕の力が強くなるのが分かった。


「・・・・・・笑ったりしない?」
「うん」
「怒らない?」
「うん」
「私を、置いて行ったりしない?」
「うん」


「・・・私を。たすけて、くれる?」
「––––––––––うん」





その日、初めて人前で声を上げて泣いた。


*****

6.淡く→←△



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設定タグ:平野紫耀 , 永瀬廉   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:かる | 作成日時:2020年7月29日 0時

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