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朝。
眠たい目を擦りながら出社をすれば、フロア全体が騒がしかった。
「何かあったの?」
同期であり、大学時代から付き合いのある友人に何事かと声を掛けた。
「大阪の支店から異動してくる人がいるんだよ。私たちと同い年だって」
「へえ。こんな時期に」
「しかもすっごいイケメンらしいよ」と頬を緩めながらはしゃぐ友人は楽しそうだ。
「うっわ。もう少し興味持ちなよ」
「え。そんなに顔に出てた?」
「びっくりするくらい表情筋動いてない」
「朝だからね」とイケメンの話を広げようとする友人を適当にあしらいつつ、デスクについた。
そこまで無表情なのかな、と頬に手を当ててみたがよく分からなかった。
正直。新しい社員よりも、紫耀にもらった写真の映像があれから頭から離れなかった。
紫耀と別れてからしばらくすれば、次の撮影場所の候補地が何ヶ所か添付ファイルとして送られてきた。
断れる雰囲気でもなかったため、自分の家から一番近い場所を選んでここがいいんじゃないか、と返信しておいた。
私なりの精一杯の反抗でもあったが、それに気づいているのか無視しているのか、『分かった』と了解の意のスタンプと日時と集合場所の指定のみが書かれていた。
不細工なスタンプだな、と吹き出してしまった。
「ほら。入って来たよ!」
「あーうん」
新しく入るという男性が上司と共に扉を開けて入って来るなり、騒がしかったフロアが更に音を上げた。
遠目から顔はよく見えなかったが、細身のスラッとした人だった。
フロアの中心へと案内された男性のよく通る声が響き渡った。
「––––––––––はじめまして。永瀬廉です」
危うく手にしていたペットボトルを落とし掛けた。
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作者名:かる | 作成日時:2020年7月29日 0時