addiction (ページ11)

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「平野、ん？」

渡された名刺には『平野紫耀』と書かれていた。
名前の部分が読めずに、眉を顰めた。
しかし名刺を差し出してきたのは他でもないショウなのだから『ヒラノショウ』と読むしかないのだろう。

「これで、ショウって読むんですか？」
「うん」

名前に関しての疑問は日常茶飯事なのか、「珍しい？」と彼は薄く笑った。

彼と話して分かったのは、歳が私より二つ上で、カメラマンの仕事をしているという事だけだった。

「あの。紫耀、さん」
「紫耀でいいよ。どうした？」
「この前のお礼、なんですけど」
「別に、気にしなくていいのに」
「そういう訳には・・・・・・」

彼の名前が書かれた無機質な紙に目線を落とすと安堵からか、ため息が漏れた。

良かった。
本当に存在してた。
夢じゃなかった。
また、会えた。

会えたらお礼をしようと考えてはいたものの、何をすればいいのか分からない。
無難に食事でも奢ればいいのだろうか。
なんて思春期の高校生のような考えしか思いつかない自分に驚きを隠せない。

紫耀はというと、うーんと唸る私をしばらく観察しているようだった。

「じゃあデートでもしようか」
「はい。・・・・・・えっ？」

聞き間違いだろうと、弾けるように声のした方へ顔を上げれば、紫耀は酒のつまみを口にしていた。
整った横顔を眺めていると、やがて彼は海人の仕事仲間に呼ばれ、「いつでも連絡して」と短く言って席を離れていった。

遠巻きに紫耀の後ろ姿を目で追っている自分が、何だか信じられなかった。
私や海人と接している時とは打って変わって、人懐っこい犬のような紫耀がそこには居た。

え、嘘でしょ。
思わず、二重人格なんじゃないか(大変失礼である)と彼を疑いたくなった。

しかし。
愛想のいい笑顔を浮かべた紫耀が輪の中心に居る事に、言い様のない違和感を覚えた。

連絡しろと言われても、彼の連絡先なんて知らないし自分の方も教えていない。
一体どうしろと言うのだろう。
まさか海人を介して、なんて一々面倒臭くてやってられない。

とりあえず仕舞おうと名刺を持ち上げて何気なくひっくり返してみると、走り書きされたアルファベットと数字の羅列があった。

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