addiction (ページ1)

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1.雨と君ページ1

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どんよりと薄暗い雲が空一面を覆っている。
朝から重苦しい雰囲気を醸し出していた上空をぼんやりと眺めていれば、やがてぽつりぽつりと雨が降り出した。

天気予報では降水確率は低かったのに。
都合良く傘なんて持っていない。
タイミングが悪いな、なんて口元を緩めながら悠長に大きく伸びをした。

腰掛けているベンチはじわじわと水分を吸って冷たいが、そこから立ち上がる気力も湧かない。
このまま雨と一緒に何処かへ流れてしまいたい。
そんな気恥ずかしい詩のような思考になるから雨はいけない。

本格的に雨音が増してくると、そろそろ屋根のある場所へ移動しないとな、と重たい腰を上げようとした時だった。

ふと体を打ち付けていた雨が止んだ。

ゆっくりと頭上へと視線を向ければ、そこにあったのは古びたビニール傘だった。

「風邪、引きますよ」

聞こえてきた声を追うように首を逸らせると、ベンチの後ろで傘を持つ青年がこちらを見下ろしながら立っていた。

青年の顔には表情の欠片も乗っていないのに、整った顔立ちと纏う雰囲気が相まって、それが何故か腑に落ちた。
少し雨に濡れた前髪が色気を放っている。
綺麗な人だな、なんて場違いな感想が浮かんだ。

雨の音なんて、最初から聞こえていなかったかのように、もう耳には届いていなかった。

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