探偵は愛に生きる (ページ10)

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A ページ10

「だから、俺が悪い訳じゃ無いと思わないか？」

「・・・そうっすね、っと、そろそろ時間ですよ、
立てますか？」

女が駄目だと分かると、次から次へと酒を呑んで、嫁の愚痴・・・
奥さんも、あの女性も、こんな奴の何処が良いんだ？

「すみません、領収書貰えますか？」

会計を先に終え、カウンターに突っ伏したままの男の元へ戻る

「・・・俺は、どうすりゃーいいんだ・・・」

先ずは浮気をする前に、奥さんと話せばいいんだよ
ちゃんと、お互いに思っている事を

そう言いたいけれど、相手は依頼人

「ほら、行きますよ」

「んーー・・・」

自分の肩に男の腕をかけてやると、素直に寄りかかりながらも、自分の足で歩いてくれる

「・・・奥さん、待ってますよ」

つい、本音が出てしまう
男の揺れている気持ちが、見え隠れしていたから
何だかんだ10年も一緒に連れ添えば、誰だって嫌な部分は見えてくる

それでも、一緒に居た長い年月は、色々な思い出となって、愛を深めて行く

もう、恋の様な気持ちを無くしていても
かけがえのない、愛が残る

「・・・ああ、いつも待ってくれてる
・・・真っ赤な目で、笑って・・・お帰りって」

男が泣くのを堪えながらも、答えを出す

「・・・かっこいい奥さんですね」

男をタクシーに乗せ、ドアが閉まる前にそう言うと、酔いの醒めた顔で、男も負けじと言い返してくる

「ああ、俺の嫁はかっこいいんだ」

すっきりした顔で、笑って帰って行った男

・・・リーダーに怒られるかな？///

そう思いながら、自分も帰ろうと、車を止めてる方へ歩き出そうとした時

それこそ長い間一緒に過ごして来た人が、柔らかな眼差しで、此方を見ていた

・・・その人に近付いて、上から抱きしめる

「・・・お疲れ様」

俺の背に手を回して、耳元で囁かれた言葉に
ほっと力が抜ける

流石に二時間近く、愚痴を聞いていたのは堪えてたみたいで

「うん、少し疲れた///」

「・・・そっか、任せろ！その分踏んだくってやるからな///」

背に回された手が、ぽんぽんとリズム良く叩かれる
赤子を宥めるように、ゆっくりと

「宜しくお願いします！リーダー！」

抱きしめた身体を離し、直立不動で敬礼すると

「任されました！」

リーダーも、笑顔で敬礼してきた