探偵は愛に生きる (ページ22)

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S ページ22

りょう君が、りょう君じゃ無かった・・・

頭の中がぐるぐるで、それでも運転に集中しようと思えば思うほど、凡ミスで大切な人を危ない目に合わせる所だったり

危ねー、この車どっから出てきたんだ？

左に車線変更しようとしたら、いつのまにか並走していた車

寄りにも寄って左、さとし君が座る助手席

・・・さとし君

・・・違和感しかない

初めて出会って恋をして、頑張って聞いた名は
偽名で・・・分かるよ
最初は騙そうと近づいて来てたんだし・・・
でも、あの時舞い上がった俺の気持ち迄
否定されてる様に思えてしまう

「・・・御免」

さとし君のその小さな声に、自分の考えで頭がいっぱいの俺は気付く事無く
団地に着くまでの間、車内は無言で満たされていた

ふー・・・やっと着いた
ほっとして溜息がもれる

「さとし君、着いたよ」

助手席から勢いよく飛び出して、後部座席に乗った機材を一人で全部見に着けていく

「さとし君？」

返事は無く、後部座席のドアが閉められ、スタスタと団地に向かって歩いて行ってしまう

「ちょ、待って！」

慌ててシートベルトを外して追いかける

「さとし君！！」

腕を掴むと、振り払うかの様に払われ、向き合った顔は、無表情で

・・・何で、そっちが怒ってんの？
言いたい事を我慢してるのは俺でしょ？

ついムカついて、睨む様に見据えてしまう

「・・・たかが名前で、何でそんな顔されなきゃいけないの？」

・・・さとし君のその言葉に、俺の中で何かが崩れ落ちていく

・・・俺の気持ち、全然届いて無かったんだ・・・

『・・・りょう』

あの時そう言って、笑って見上げて来た顔と同じなのに

今は、遠い・・・

「・・・一人で行く、帰ってて」

「・・・分かった、気を付けて・・・」

りょう君はもう居ない

俺がその名を呼ぶ度に、君は何を思っていたの？

君に教えて貰った特別な名前

嬉しくて、名前を教えてくれた事が嬉しくて

少しは、俺に好意を抱いていてくれてるのかな？///

そんな風に浮かれてて

「・・・間抜け過ぎる」

和もじゅんも、いつのまにか知ってたあの人の名前

俺だけが、偽名を何時迄も嬉しそうに呼んでるのを見て、笑ってたの？

内心、俺を笑って・・・

『・・・何やってんの？』

携帯の着信に出ると、低く怒った声

『うちの、リーダー泣かさないでくれる？
・・・そんなんじゃ、あげないよ？』

・・・それだけ言って、一方的に切られた電話

泣いてる？

・・・誰が？