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S ページ3

何か外が騒がしいー
起きちゃうじゃないか!!
この人はお疲れなんだから!

「・・・ん」

俺の肩に乗ってる髪の毛がふわりと俺の頰を擽ぐる
身動いだ身体に

「未だ少し掛かりそうだから、寝てて大丈夫ですよ」

そう小声で囁くと、髪の毛がふわふわ動く

「ふふ」

俺の肩から頭を起こし

「んーーーー」

上半身で伸びをしたその人は、両手を上に上げたまま

「何それ?普通起こさない?」

そう言って、流し目と、強烈な微笑を俺に向ける

電気は当に復旧していて、未だ近いその人の下から見上げてくる顔に、多分相当真っ赤になってしまったんだろう

「ふふ・・・俺に惚れたの?」

その声と、妖しげな笑みを浮かべるその人に、抗う事が出来ず

俺はコクコクと首を縦に振る

「男が好きなの?」

それは断じて無い!!
俺は物凄い勢いで、首を横に振った


「ふーん・・・」

ふーん?
え!?聞いといて、興味無し!?

ガコガコと少しずつ開いていく扉を、その人が何の感情もなさそうに見つめる

「あの・・・」

扉が開いたらもう会えないかも知れない
何せこのビルに会社を構えてから5年近く経つが
目の前に居る人と会ったのは、今日が初めてで

鞄も持たないその人は、歳でさえ不詳で
この人はどの階から乗り込んで来た!?

職業は!?
住んでる場所は!?
趣味は!?
彼女、彼氏居ますか!?

頭の中でグルングルン見合いで聞く様な質問が飛ぶ



「名前・・・」

漸く搾り出せた声に、その人が、俺に振り返る

「・・・ふふ」

感情が無かった顔に笑みが浮かぶ

よっぽど必死な顔をその人に向けていたんだろう

可笑しそうに笑うその人
笑われているのに、それさえも嬉しいと思ってしまう

その姿に見惚れたまま、胡座をかいて動かない俺に
その人が近づいてくる
笑みを浮かべたまま


至近距離まで近づいてきた瞳を
茫然と見つめていると

少しだけ伏せた瞳が囁いてくる


「目は閉じるのが、マナーだろ?」


そう言われて、反射的に目を閉じると

口に当てられた柔らかな感触



「・・・ふふ、もういいよ」

何時迄も目を閉じている俺に、立ち上がったその人が、上から笑って声をかけてくる

「・・・肩のお礼だよ、じゃーね」

大丈夫ですか?と声をかける業者の人を掻き分けて行ってしまう、その後ろ姿を必至に追いかけながら

「名前!!」

有りっ丈の大声で叫ぶ

見知った顔が、驚きに目を見開いているのも無視して


「・・・りょう」


階下で俺を見上げ、りょうはそう微笑んだ

O→←N



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作者名:かおる | 作成日時:2019年2月18日 22時

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