探偵は愛に生きる (ページ2)

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N ページ2

「なー、しょうさん遅くねー？」

ソファーに寝転びながら雑誌を読むじゅん君が、顔も上げずに発した一言に
パソコンの画面から目を離し、壁に掛かった時計を見る

「・・・確かに」

時計は約束の12時をとっくに回っていた

「依頼人との約束は、何時も使う喫茶店に10時
・・・泣かれでもしたかな？」

確か電話越しに訴えてきた内容は、うちの大まかな収入源になっている、浮気調査

一体世の中の貞操はどうなってんだ？
って、多少うんざり気味になるのはしょうがない話だ。

金は金、働かなけりゃ飢え死にだ

楽しくない結果の確率が高い仕事だとしても

「・・・俺、見てくるわ」

雑誌を机に置いて起き上がり、首をコキコキと鳴らす

「心配ですか？」

クスリと笑うと、嫌そうな顔が返ってくる

「あれでも一応ここの社長だし・・・」

じゃーな、そう言ってじゅん君が事務所を出て行く

・・・素直に助けに行くと言えばいいのに

しょうさんがこの探偵事務所を立ち上げて、もう何年だ？
困っている人を助けたい！
その方針のまま、低価格で提供しているが為に、うちの事務所は何時もかつかつだ。

それでも、社長であるしょうさんに付いていく

依頼人に、心から感情移入して余計ややこしくしてる感が偶にあるが

折れない心、助けたい！

いつまでもその気持ちを持ち続ける人だから
俺達は、あの人に付いていく

ガチャリと、背後で扉が開く

早かったな？喫茶店に行く途中で出会えたのか？

振り返ると、困った顔のじゅん君が扉から顔を覗かせている

「どうしたんですか？しょうさんは？」

「いやー・・・なんつーか・・・」

「・・・何です？」

「エレベーターが壊れてるみたいなんだけど・・・
しょうさん、中に居るとか、無いよな？」

今下の階で業者の人が直してんだけど・・・

じゅん君の言葉が続く

はー・・・

「直りそうなんですか？」

「ん？ああ、もうすぐ開けられるとか言ってたぜ」

「・・・行きましょう」

「・・・やっぱり？」

「えー、・・・十中八九中に居るでしょうね」

良く分からない所で運の無さを発揮する男

そして、そういう時はすこぶる弱い

「気絶でもしていたら、業者の方にご迷惑を掛けます」

立ち上がり、じゅん君を連れて下の階に降りていく

確かに、下の階が騒がしい

「・・・流石に気絶は・・・ありそうだ」

後ろでじゅん君の溜息を聴きつつ

全く、飽きない人騒がせな人だ

俺は笑いを堪えながら、階段を降りて行った