安住の地を求め

痛いのは ページ33

「怪、見て///」


兄の手の中には、甘いチョコレート


「チョコだ！///」


「んふふ///怪、お口あ〜ん」


「あ〜ん///」


口に入った途端、口いっぱいに広がる甘い、甘いチョコレート


「もうないの？///」


もっと食べたくて
にこにこ笑う兄にせがむと


「一個しか無かった。ごめんね、怪」


もう溶けて、お口の中に
くれたチョコレートは無くて


「なんで一個しか無いって言わないの！？
なんで半分こしないの！！」


いつも
いつも
僕ばっかり！！


双子なのに
兄ちゃんなのに


僕より
小さく、細い身体


「僕は先に食べたよ」


優しい嘘
身体が弱い兄
いくら僕でも気付くよ


「にい・・」



「うるさい！！」


おうちに帰って来た瞬間
怒鳴る声


「でかい声出すなって何度言ったら分かるの！？」


母が近づくと同時に兄が僕の前に出る
と、同時に



兄の身体が横に吹っ飛ぶ



僕は


動けない


「何！？何なのお前は！！
私が近寄るとこれ見よがしに怪の前に立って！！
私を何だと思ってんの！！
馬鹿にしてるの！！？」




おかーさん、は

力いっぱい兄を叩いた後も


蹴って


蹴って


蹴って


僕の身体も


兄の身体も


あざだらけ




「あー、・・すっきりした」


動かない兄を見て
満足気に笑うこの人は


本当に僕達の

おかーさんなのかな・・？


「怪！行くわよ！」


「・・・え？」


「とろい！！彼がね、一人なら連れて来ても良いって///これであの男とようやく離れられる！！」


グイグイと引っ張られる腕

おかーさんが
嬉しそうに僕の腕を引っ張る


「え・・？」


頭が追いつかない


動かない兄ちゃんから
どんどん離れていく


どういうこと？


どういう意味？


兄ちゃんは？




「まって！！まって！！いやだ！！
はなせ！！！はなせーーーー！！！
兄ちゃん！！兄ちゃん！！！」


ぼやける目の先で

僅かに動く身体




無情に閉まるドアが、その姿を隠す


「・・・怪、うるさい」




頰に走った痛み


僕と


領が


離れたその夜




叩かれる痛さより


もっと痛いものがある事を知った夜

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