何も無い部屋の中で ページ32
「おなかすいたね」
雑多な部屋の中
壁際に寄り添いながら座る男の子が二人
どこか異臭もする部屋で、窓を開ける事もなく
「にーちゃん？」
返事がない事を不審に思い、片方の男の子がもう一人の顔を覗き込みました
荒い呼吸
顔が赤く、寄り添う身体はぽかぽかなのに
寒さを感じているのか、カタカタと震える小さな身体
「だいじょーぶ。すぐなおるから」
泣きそうな顔を見せる男の子に、もう一人の子が
笑って応えますが、身体はとうに限界を越えていたのか
ずるり、と
倒れて
ぱたりと寝転がったまま
荒い呼吸を繰り返す
もう一人の子が、片付けておいた布団を引っ張り出して、動かない男の子の横にひきました
「にーちゃん！お布団に入って！
にーちゃん！！」
細い手で、力無く揺さぶられる感覚に
苦しそうに閉じていた瞳が開き
赤い顔をした男の子は、それでも、なお
笑います
「ありがと、怪」
鈍い動きながらも、布団の中に入ったのを確認したもう一人の子
涙と汗を拭い、台所へと駆け出しました
あつい
おなかすいた
にーちゃん
にーちゃん！！
タオルを引っ張り出して、小さな椅子を踏み台にして蛇口をひねり
タオルを水に潜らせますが
「うまく、できない・・」
絞ってるのに、いつまで経っても
ぼたぼたとタオルからしたたる水
それでも
少しずつ
少しずつ、小さな手で水を落としていきます
ようやく水が落ちなくなった頃には
男の子の手の体温で
ぬるく濡れただけのタオル
それでも
それがその子の出来る精一杯の事で
男の子は急いで戻り、丸くなって眠る子のおでこの上にそっと乗せました
開かない目に、男の子はグッ！と、口を噛み
一生懸命自分がされた事
横になって苦しそうにする
その子がしてくれた事を
おくすり！？
おくすり！！
数えるぐらいしかない引き出しを
次から次と開け闇雲に探すも
置いていない物が見つかる筈も無く
「にーちゃん、となりのおうち行ってくる」
寝てる男の子の横に膝を付け、小さな声で話しかけました
「・・出たら、怒られるよ？」
返事を期待していなかった男の子は、目を見開き
涙を浮かべて笑いました
「にーちゃんの方が、だいじ
食べ物も、もらってくる！！」
「怪！！」
呼び止める声も虚しく
小さな背中を追いかけていた瞳は
自分の意思に反して
閉じていきました
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じゅーくろー(プロフ) - ありがとうございます！幸せもらいました。来年もお暇な時に書いていただけたら嬉しいです。良いお年を！ (2019年12月31日 11時) (
レス) id: 26990fcaa5 (このIDを非表示/違反報告)
かおる(プロフ) - じゅーくろーさん» 沢山のコメント有難うございます。なので、1ページだけだけど、追加してみました笑さて、今日中にサンタさんは届けられるのか？頑張れサンタさん！！ (2019年12月25日 10時) (レス) id: 17862cad9e (このIDを非表示/違反報告)
じゅーくろー(プロフ) - こんにちは。初めて読ませていただきました。泣けました。これからシリーズ読ませていただきます。かわいいピュアな小人のやまに癒やされました (2019年12月15日 13時) (レス) id: 26990fcaa5 (このIDを非表示/違反報告)
かおる(プロフ) - masaoさん» 今晩わー。終わっちゃいました。とてつもなく寂しいです。でも和とまー君がきっと、最後まで支えていてくれる。そう信じて。じゃないと、のんびりさんと、うっかりさんコンビだから笑コメ有難うございました。 (2019年10月28日 22時) (レス) id: 17862cad9e (このIDを非表示/違反報告)
masao(プロフ) - かおるさん、こんばんは。私はこの小人さんのお話が大好きで、いつも更新があると楽しく拝読していました。嫉妬メラメラの今の宿主の２人に笑いました。小人の２人とその宿主の２人の素敵なお話、ありがとうございました。 (2019年10月28日 20時) (レス) id: 7a74d9ef4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かおる | 作成日時：2019年2月3日 0時
