ER [ars. so]

帰宅 ページ49

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「お帰り」





「……」


「お帰り」


「……」


「おか、」


「相 葉ちゃんに聞いたの？」


「聞いた。…御免、迷惑かけて、」


「迷惑かけたのは俺だから」


「違う、…巻き込んで、…御免。
　顔、……ちゃんと見せてよ」



その、


頼んでおきながら、勝手に俺の顔を自由にさせるお前が…



「……寝てない？」


「…寝過ぎて頭が痛いくらい」


「夢の話？(笑)痩せた…？」


「太ったからダイエット中」


「え〜、御飯作って待ってたのに(笑)
　ついでにお風呂の準備もしてあるよ」


「……謹慎は解けてない…」


「ご飯にする？お風呂にする？」


「迷惑かけたくないって、しょう君が言ったん、」


「それとも、……俺にする？(笑)」






…ふざけてる。


俺の顔を捕まえたまま、隠す事を許そうともしない。




勝手に、いなくなって、



勝手に、会わない言い方しといて、



なのに勝手に会いに来て、



俺のせいで、お前は傷付いて、



お前の将来を、…俺が、俺が奪ってしまったんだって




眠れる筈がない、



そん時寝てた自分すら許せない



あの時、助けられなかった自分に吐いて、



…お前は、






どこにもいなくて…






「…御免ね。…あなたを泣かせてばかりだ」






頰から手を離して、その胸に俺の顔を隠してくれる。



その優しさに、






全部の声を、押し殺した…。









・








「……ただいま」



「…お帰り、さとし君」







テーブルの上には、リベンジな煮物が置いてあった。


胃袋を掴むのには、煮物だと思ってそうなしょう君に笑ってたら、



「今日は固形はやめた方が良さそうだね。
　お粥なら食べれる？」



絆創膏だらけの左手で、それらを全部片していってしまう。



食べるって言ってるのに、失敗作だからって。









しょう君は、捨ててしまう。






好きな仕事も、好きだと言った俺の事も…



巻き込みたくないと、捨てるんだ…。



触れるだけ触れて、…



俺の心も、言葉も、待っててくれない…。








待って…くれない……









・









片付けていく左手を取った…。



絆創膏の下に、血が滲んでる。









「なら、…お前にする」








目を合わさない言い訳に、





左手に、キスをした…。

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