ER [ars. so]

不器用な人�� ページ36

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「しょう君、今日はちゃんと自分の家に帰りなよ」


傷付けたのは俺なのに、慰めろと豪語する。


こんな俺の、何が良いの？


しょう君は何か勘違いしてるんだよ
ちゃんと女の子好きになりな


「さとし君と一緒にいたい…」


背中に回された手が強くなる


「痛いよ、しょう君。潰れる(笑)」


「…さとし君が好き」


「…うん」


狡い
んだろうな、俺は。

俺とは違う可愛い女の子を好きになってほしいと思っておきながら、口には出さない。


だって、…


ちょっとだけ気付いたから。


気付かされたから。


俺を甘やかすこの手が、腕が、胸が、声が、…


なくなってしまうのは、


きっと、耐えれない程の寂しさを連れて来るって、
嫌だと、気付いたから。



だから、


離したくない。
離さない。


一緒にいたいとか、側にいたいとか、


側にいてとか言わず、ただ


うん。
とだけ、返事をして受け流す。


しょう君の気持ちを囮にして、籠の中に閉じ込める。



…嫌な奴。


そんなん知られたら嫌われるかな…。



好きじゃない…。


俺はしょう君の事、好きじゃない…。


散々顔を押し付けて、散々甘えておいて、


しょう君が触れた、俺の左手の内側が、


熱くて、痺れて、叩かれた頬の痛みなんて、


軽く凌駕してる事に気付いたのに。



ただ、



受け流す。




しょう君、俺、男なんだ。



お前が側にいてくれる事に甘えておきながら、
そんな風にはなりたくない、なったら駄目だろって、
抗ってる。
一人で立つのが当然だろって、古臭い頑固な顔が出てくんだ。






「…相 葉ちゃんが、部屋見つける迄だよ」


「良いの…？」


「…うん」


やった！って言わんばかりに、ぎゅうって更に抱きつかれて、低く嬉しそうな吐息が耳にかかるのを、受け流す。



囚われているのは、俺かも知れないね…。




俺は、ただの、狡くて臆病な男だよ。





「今日は晩御飯作ろうとしないでよ(笑)」


「えー、今日はブリの照り焼きに挑戦する気だったの
　に〜(笑)」


「しょう君はチャレンジ精神が凄いね」


「さとし君の胃袋を掴む(笑)」


「ふふ。その前にしょう君のお腹が壊れちゃうよ」


「もう治った(笑)」


「お魚料理は怖いからやめて(笑)
　…しょう君ありがと。
　そろそろ行くよ、手続きしないと…」


「ちゃんと頰冷やしてよ」


「うん。…分かってる。家で、待ってて」


「……その言葉は狡いよ(笑)」


うん、知ってる…。
御免な、しょう君。

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