１話 鉛丹色 ページ2
審神者視点
今、緞刀部屋はとても重い空気に包まれていた。近侍の山姥切と俺の二人は目の前に出た時間を見てため息をつく。
｢一時間三十分。｣
別に刀剣様方が悪い訳ではないのだ、だけど、だけどね。 うーん、うん。
やっと資材が潤ってきて よしっ、たんとうするぞー！ と、ウキウキ気分で来たはずなのに。確かに、まだこの時間で来ていない子もいるよ？でも出る確率ひっっくいよね、絶対。
｢ま、まぁ。まだまだ資材には余裕がある訳だし？もう一回、もう一回だけ………｣
何時もなら、｢無駄遣いをするな｣そう言ってくる山姥切も何も言ってこなかった。
資材を妖精に渡す。出てきた時間は…
｢三時間！やった、やったぞあのループから抜け出した！｣
二人して胸を撫で下ろし、俺は早速手伝い札を使う。
そしてその姿が現れた瞬間俺は直ぐに抱きついた。
｢来た！蛍丸、やっと来た！｣
｢わっ、もー挨拶くらいさせてよねー。｣
くすくすと笑いながら、その小さな体でしっかりと俺を支える。
あぁ、いくら緞刀しても出なかった蛍丸やっと来た。
そして蛍丸が自己紹介を済ませ何か忘れていることを思い出す。もう一つの刀剣をすっかり忘れていたのだ、だけど今の俺はとても機嫌が良いので後何十分かで出来上がるところを手伝い札を使い短縮する。
｢おい、さすがにそれはやり過ぎた。｣
｢いーの、手伝い札も貯まってる事だし。蛍丸も来たことだしね。｣
そして姿を表した途端俺はまたもや新刀剣に抱き付く。それはずっと待っていた刀剣女士だったため致し方ない。
｢Aーー。お前も、お前も来てくれたのか！！！｣
やはり今日の俺はついてる！そう得意気になっていると、俺は彼女に違和感を感じた。
蛍丸の様に返答は無く、顔を上げてみると、Aは何処か遠くの一点を俺の知らない鉛丹色の瞳で見つめていた。
｢……………A？｣
『………………………………………』
呼び掛けても此方を見ない。俺の知っているAは、元気で、優しくて、本丸の姉的存在だと認識していたのだが………。
山姥切も異変に気が付いたらしく段々と険しい顔付きになっていく。
俺が体を離しても何も反応せず、本当に生きているのか心配に成る程であった。
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作者名：海老炒飯 | 作成日時：2017年5月5日 21時
