27話 ページ30
声を荒げて話そうとする私に静かに彼は遮った。
「Aは優しく、抱擁感のある女性だ。流れることなく物事をしっかりと己で判断できる君は美しいと思ったし、時には厳しく当たるが裏を返せば愛情を感じさせた」
彼の目にはそんな風に見えるのか?
「違う。そんな綺麗な物じゃない。私は冷酷な人間だ。興味がない人に対し優しくなどしないし、むしろうっとおしいとさえ思っている」
「それは好都合だな!俺以外に優しくされたら嫉妬でおかしくなる」
一歩ずつ彼が近づいてくることに対して、私も距離を取ろうと後ずさる。
「れ、煉獄さん…」
「君と出会った時から俺は君の事を想わなかったことなど一度もない。Aを愛してやまないんだ」
とん、と壁に背中が当たったことを感じた。彼の目はまっすぐに私を射抜いている。その瞳から溢れる熱が私にも移りそうだ。
「どうか、俺を受け入れてほしい。Aの負担を俺にも分けてくれないか」
耳元で彼は懇願するかのように呟いた。
「…狡いよ、そんな言い方」
彼に対して甘くなるのはきっと私も彼に対して…
「受け入れたくなってしまいそうだ」
「どうすればAに伝わる?」
「十分に伝わっている。だけど言っただろう?私は遠目で見るくらいが」
「俺が無理だ」
私は言葉を失った。いや、ここまでとは思わないじゃないか。
「なんで、そこまで私にこだわる?私は煉獄さんにとってなんだ?」
「俺にとってかけがえのない女性だ。君以外を愛することが出来ない程惹かれている」
…あぁ、完敗だ。彼は私自身を見てくれていた。他の人とは違う。
「降参だ。参ったよ。煉獄さんがここまで粘り強い人とは思っていなかった」
「俺にも譲れないものがあったという事だな!」
「私も煉獄さんの事になるとつい甘やかしてしまうみたいだ」
全く困ったものだと少し目を伏せて笑った。
「…」
気まずい雰囲気が流れるのに気が付いて見上げる。その瞬間後悔した。彼との距離がほぼなかったからだ。先ほどまでは私も切羽詰まっていて気が付かなかったけど、とても気恥ずかしい。暑い。
「そろそろ離れてくれないだろうか…このままだと茹で上がりそうっ…!」
私の頬に煉獄さんの右手が添えられた。彼の手は大きくて、頬がすっぽり収まってしまった。自身の身体が強張ったのを感じる。
「キス、してもいいか?」
「へっ!?ちょっ…んっ」
今、聞く必要ありましたか!?
116人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スプラン(プロフ) - 紫陽花さん» コメントありがとうございます!すみません、剣道に関してはど素人で適当につけた設定でした…!詳しく調べて、改めて書き直します!ご指摘ありがとうございます! (2020年2月19日 22時) (レス) id: d11eb7c59d (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - すみません、大変面白く読ませてもらっているのですが、一つ気になることが…。9話で主人公さんが「剣道6段」を所持しているとのことですが、まず、剣道6段の昇段試験を受けるには、年齢制限で最低28歳になってないといけません。少し現実的ではないかと… (2019年9月16日 20時) (レス) id: cb5753e0d8 (このIDを非表示/違反報告)
スプラン(プロフ) - ラムさん» 40票目ありがとうございます(`・∀・´)パソコンの部屋にエアコンがなくて手詰まり状態です…もう少しお待ちください(´・ω・`) (2019年7月29日 0時) (レス) id: 07c7378595 (このIDを非表示/違反報告)
ラム - 40票目の星は頂いたぜ!!ほんとにこの作品にはドキドキさせてもらってます!! 更新頑張ってください!!!!!!! (2019年7月26日 13時) (レス) id: a84576bae2 (このIDを非表示/違反報告)
スプラン(プロフ) - 星ポッチが30になってました!アリガトウゴザイマス! (2019年7月12日 23時) (レス) id: d11eb7c59d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スプラン | 作成日時:2019年6月24日 23時