愛を生む人 … 57 ページ13
「──────────ッ!?」
「宏光…っ!?」
「…─、トモ……」
「そうだよ…、気分はどう?」
前髪を撫で上げ、もう片方の手がそっと頬に添えられた
混濁する意識、
光と影…静と動の境目が曖昧なまま、無理やり連れ戻された鈍色の世界…
どうして…トモが…?
それに…
「ここ、ドコ…」
「病院だよ、四宮の…、お前母屋で倒れてココに運ばれてきたんだ…」
「……、倒れた…?」
なんでオレ、倒れたんだっけ…
時間を巻き戻しさせようと、靄のかかる頭をフル回転させた
ポツン…ポツン……と記憶の一コマが細い糸で繋がっていく
きらびやかな調度品に囲まれた部屋…、目の前には女の人がいた、物悲しい表情で涙を浮かべて…
《…お願い、その子を産むのは諦めて…、絶対に生まれてきてはいけない子なの》
《どうしてですか!?あなたにそんなコト決める権利ないです!!》
《…仮に生まれてきても、誰も幸せにならない》
《そんなコト無いッ!、少くてもオレはこの子に幸せを貰ってる、こんなオレでも命を育める喜びを……》
そうだ、
ソファから立ち上がって…そしたらお腹痛くて…目の前、暗くなって…
「…ッっ!…子どもは!?この子大丈夫だよね?」
ベッドから跳ね起きてトモの腕を掴み、問いただした、その手をトモが包むように握ってきた
「今はまだ、大丈夫だ…」
オレの目を見ながら、静かな声音で話すトモ…
その瞳の奥に見える心の揺らぎに、気付いた
今は…?
「…今はまだ、って…、これから何があるの?」
上擦る声で尋ねると、オレの手を握るトモの力が強くなった、目元をシュッと引き締め、喉奥から言葉を引き出そうとする仕草を見せた
「宏光…」
「…イヤだ…」
「宏光、聞くんだ」
「イヤだ聞かないっっ!!」
「宏光ッっ!!!」
抵抗するオレを落ち着かせようと、トモがオレの二の腕を掴んだ
「頼む宏光聞いてくれ!大事なコトなんだ!!」
振り絞るように訴えるトモ…二の腕に食い込む指が、トモの必死さを伝えオレの抵抗を封じて来た
「…お腹の子は、もうこれ以上成長しない…、このまま胎児として、子宮に留めておくことは出来ないんだ…」
「ウソだッ!!」
「…ある因子が影響して、妊娠の継続を妨げるホルモンを過剰に分泌させてる、これ以上胎児を体内に留めて置くことは、母体の…宏光自身にも悪影響を及ぼすんだ…」
そして、オレの目を真っ直ぐに捉え、重い口を開いた
「その子は直に、命の終わりを迎える」
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GAYASAKURA(プロフ) - まいまいさん» 思います、数ある書き手様の中から見つけて下さり本当にありがとうございます!ご縁を頂けて嬉しいです! (2020年8月5日 21時) (レス) id: a6c9395ed2 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - まいまいさん» こんばんは!連コメありがとうございます!長々と引き伸ばしておりますが、少しでも楽しんで頂けてたら何よりです!えち展開もありますが、サラッと流して頂ければと思います、《I wish》や《雪華》も似たような展開なので、またお時間ある時にお越しいただければと (2020年8月5日 21時) (レス) id: a6c9395ed2 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - 皆川が怪しくて気になりますが、ついに2人が一緒に暮らせるようになったので大満足です!!そしてニカも。2人が結ばれるところを早く読みたい〜HEATの宏光と太輔が楽しみすぎます!! (2020年8月5日 20時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - pochiさん» また読み手様の失笑を買いそうです笑笑、ある程度纏まったら触りだけアップしたいと思います!コメ大感謝です! (2019年6月11日 19時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - pochiさん» 移行になりました!6章ほ100作目になるので、ココで家族にしてあげたいんですが、どうかなぁと言うところです、ホントに書きたいのは、家族になってからなんですけどねー笑、引っ張りすぎたなぁと反省しております、次作も考えておりますが、これも長編になりそうで (2019年6月11日 19時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:GAYASAKURA | 作成日時:2019年5月5日 2時