君想う夢・君恋し花 …４

愛を生む人 … ４２ ページ46

「こんにちは、四宮くん」
「お久しぶりです…ユリアさん」

意外にもサロンからそれほど離れていない場所に四宮くんのクリニックはあった

聞くと、お祖父様から引き継いで院長になったらしい、黒のセルフレームのメガネに何度か手をやりながら、何となく落ち着かない雰囲気で口を開いた

「…それで、私に頼みたいコトとは？」

看護師がテーブルにティーセットを置いていくと、四宮くんは訝しげな表情で聞いてきた

「ええ…」

どこから話せばいいか…、これから彼に話すコトは、私ですらウソであって欲しいと願わずにいられない内容だ

「ユリアさん？…アナタがそこまで躊躇うということは、何かとても深い事情がある事なんでしょうね、ならばお話出来る気持ちが固まるまで待ちますよ」

「…ゴメンなさい、ありがとう…」

冷静な彼の態度に少し気持ちの落ち着きを感じ、私は覚悟を決め赤色の小箱を差し出した

「コレをDNA鑑定に出して欲しいの、北山くんの血液と一緒に、」

「北山さんの血液…？」
「ええ、この検体と北山くんの血液のDNAが一致するかどうかを知りたいの」

「DNA鑑定？…失礼ですがこれは、どなたの検体ですか？」

当然の質問だ…
私は一度目を伏せ、掌をグッと握り四宮くんを見た

真摯な表情…
この人なら、全てを打ち明けても大丈夫だ
確信に近いその直感に、私は智久と北山くんの未来を賭けた

「この検体は、私と智久の…母親違いの弟のモノなの…、この検体と北山くんのDNAが、もしかしたら一致…するかもしれない…」

そう答えると、冷静という文字そのままを佇まいで表していた四宮の顔に、ピリっと線が入った

「それは、…つまり北山さんと智久が、血の繋がった兄弟である可能性がある、と言うことですか？」
驚きを隠せず、言葉を一つ一つ確かめるように四宮くんが聞いてくる、私はその問いに頷きを返した

「そんなバカなっ！では北山さんが宿してる子は…っ！？まさか…」

勢い立ち上がり、私に詰め寄る四宮くんの声は
動揺に震えていた

「ええ、…血の繋がった兄弟で、子を成したことになるわ、そして絶対に生まれてはならない…命……」

「そんな…バカな…」
「智久から、胎児の成長が遅れてると聞いたの、もしかして二人のDNAの交わりに原因があるとは考えられない？」

これでも私も医者の端くれだ
医学的な知識はある

疑問を投げかけると、力なく椅子に腰賭けた四宮くんが、何度か頷いた



「、、、考えられます…、いや、それしか…」

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