君想う夢・君恋し花 …４

愛を生む人 … ２９ ページ31

「…わぁ…キレイだ…」



トモの帰りを待つ間、賑やかな声が気になってベランダに出てみた

「あ…パーティーって庭でもやってんだ…」

見えたのは、大勢のスーツを着た人がホテルの庭で楽しそうに談笑してる風景だった

「ふーん…楽しそう、トモも居るのかな？」

取ってくれた部屋はわりと上の階で、その場所にトモが居るかどうかは分からなかった

なるべく夜風に当たるなと言われてたけど、この場所の空気は、塵や埃が全く無くてとても気持ちいい…

体の中までキレイにしてくれるように思えた

ベランダの柵に手を掛け眺めてると、芝生の上に次々とオレンジの火が灯った

「あ、キャンドルナイトか…」

トモが言ってたコトを思い出し、何だかワクワクした

多分ランダムに置いてるんだろうけど、揺れる炎がとても優しい線を描いているように見えた

「降りてもいいよな…すぐ戻ればいいし」

やっぱり近くで見たくて、ジャケットだけ羽織ってオレは下に降りていった

流石にパーティー会場を抜けて行くわけにいかなくて、エントランスを出て外を回って庭に入った

周りはスーツを着た人ばかり…、とりあえずジャケット着てきて良かったぁ、とホッとしてコソコソと庭に入った

キャンドルの光を際立たせるためか、庭の照明は割と暗くて、部外者のオレでもどうにか目立たずに《光の絨毯》を楽しむことができた

もう帰らないと…と思った時、近くにいた人が「あの小川からキャンドル流れてくるらしいよ」と連れの人に言っていた

庭に流れてる小川…トモが言うには森の中の湖かからの支流らしい

「秋なのにミルキーウェイとか、季節違うけどなぁ」

ミルキーウェイ…天の川……
その言葉は、オレをあの日に戻してくれた

時間は戻らないけど、せめて…あの光の川をもう一度見たいと思った

太輔…

苦しいほどの切なさを両腕に抱き締め、静かな川のせせらぎに乗せて流れてきた光の群れに、目を移した


柔らかで暖かな光…
それはまるで、アイツの笑顔その物に思えた


もしも、…もしも願いが叶うなら…



「…ひろみつ…」


───────…ッっ…！？

目の前を、最初の二つのキャンドルが流れた時聞こえた声…


思わず振り向いた視線の先に、オレだけの《光》があった…


「…たい…すけ……」


まさか、…そんなバカな…
違うコレは、キャンドルの光の中の幻想だ


触れたら消えてしまう、幻……



でも、そうじゃなかった

抱き締められた身体は…確かに太輔の温もりを伝えて来た

愛を生む人 … ３０→←愛を生む人 … ２８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す