君想う夢・君恋し花 …４

愛を生む人 … １４ ページ16

「それでも放っとけないよっ！ニカはオレの家族みたいなもんなんだ、廓でずっと助け合って生きて来た、ましてやオレのせいであんなケガまでさせて…っ、オレは見て見ぬふりなんか出来ないっ！！」

掴まれた腕を振り解こうと身を捩っても、トモはそれを許してくれない、それどころか胸元に引き寄せられ動きを封じられた

「もうアイツは出て行った！お前の家族はオレだ！オレだけなんだ！！」

さっきまでの冷静なトモは姿を消し、まるでオレの全てを取り込もうとするかの様にキツく抱き締めた

でもオレにとってはトモのその想いこそ、自分勝手極まりないモノにしか思えない、理不尽な愛に雁字搦めにされ、人生すら翻弄されていく自分が、たまらなく情けなかった

「違うっっ！！」
「何が違う？」


何が…？

何もかもが違うんだ

歩きたい道も、行きたい場所も…
繋ぎたい手も…


そして、愛してる人も……─────────


「トモはオレの家族じゃないっっ！！家族は…っ金で買うものなんかじゃないッっ！！！」


押さえつけていた感情が、カラダの真ん中から暴発するように沸き上がる


熱く滾る熱がカタマリになって、外へ出たいと切望していた


「宏光…？」

そしてトモと目が合った瞬間…


ドクン…っと、心臓が大きく拍動を打った


その一度の拍動が、オレの指先の毛細血管にまで熱い感情を迸らせる


背筋を駆け登る凄まじい程の震えが、オレの中の何かを変えて行った



「あ…っ……ハァ…っ……、ナニ…これ………」

かつて感じたことが無いほどの昂りに、オレは膝から崩れ落ち床に手を付いた


「…アツい……、ナニ…っなんで………こんな……」
「宏光、どうした？」

呼吸を整えることすら難しい、聞かれたことに答えようにも思考回路か全てオーバーヒートしてしまったようにストップして、何も考えられなかった

「…この香り……まさかHEATか……？」

トモの愕然とした声を追うように、ブワッと噎せ返る様な甘い香りが、漂い始めた


「…HEAT……？」

震える声で聞き返すと、トモがオレから顔を背けるようにして頷いた


「ヤバいな…、ここまで強烈な香りは初めてだ…、立てるか？」

熱の回りで腰が抜けたようになって立てないオレを、トモが支えるようにして立ち上がらせてくれる

でも、そのトモからもオレの燻りに火を付けるようなある種の香りがした


‪α‬とΩ…
共鳴し合う、誘引の香り…



熱が一点に、集中する……


「…もう抑制剤は、効かない…」

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