君想う夢・君恋し花 …３

愛を乞う人 … ５６ ページ32

「はい、貴方のお父様の悲願であった鉱山開発…、それを私が引き継ぎました…軌道に乗せるまでかなりの年月が掛かりましたが、ようやく手応えを感じられる迄に至りましたので、貴方をお迎えに来たのです」

御厨は、静かな声と同じだけの眼差しをオレに向けて話してきた

「信じられない…そんなコトって…」

「驚かれるのも無理はありません…、太輔さんのお父様である社長は、私に《本当に藤ヶ谷を継がせたいのは太輔だ》と常日頃から仰っておられました、ですが太輔さんは婚外子…、そうなれば奥様やお兄様からは相当強い風当たりを受けるだろう、もし私に何かあれば太輔を頼むと…、ですが社長は、志半ばで病に倒れられた、お兄様はそれをいい事に私を即時解雇し、社長と太輔さんから引き離した、そして太輔さんをこの世界に追い込んだんです……、私は決してあの方を許しません…」

終始柔和な表情だった御厨が、兄貴の名前を口にした瞬間、苦々しい表情に変わった

「一介のサラリーマンとして会社を追われた私には、貴方を守る術が何一つ無かった、社長の想いを形にするには、藤ヶ谷ホールディングスと対等か、若しくはそれ以上の力を手に入れるしかない…、生前の社長はレアメタルに着目されていて、海外の鉱山開発に着手するおつもりでした、そのプロジェクトの一員だったのが私です…」

そんなことがあったのか…

当時のオレはまだホントに子供で、詳しい事情など全く知らされていなかった

「だけど鉱山開発は、失敗に終わったんじゃなかったのか…？」

オレは、その穴埋めの為に桃幻楼に売られたんだ…

「いいえ、鉱山開発はまだこれからと言う時期でした、ですがお兄様はとても保守的な方で、新たな事業に手を出す事を良しとしなかった、社長交代でプロジェクトは即刻中止…それまでの経費は損益として計上され、私や部下はその責任を取らされ全員が解雇となりました…、今の《MIKUNI》を創ったのは、当時のメンバーです、皆が先代の志を継いで、死にものぐるいでここまでやってきました…、そしてやっと、あの日の無念を晴らすことに至りました、お兄様が太輔さんをこの店に売ったのは、ご自分の遊興費…カジノでの負債を穴埋めするためだと、コチラで調べが着いております」

「っ、そんな…っっ！？」
「血の繋がった弟…しかもまだ幼い太輔さんを、あの人は…」

御厨の憤りが、握りしめた拳から伝わってきた



「太輔さん…貴方をお守り出来なくて、本当に申し訳なかった…」

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