愛を乞う人 … 53 ページ29
「太輔、オーナーがお呼びだ」
その日の午後…寝起きのボケたアタマが、オーナーからの呼び出しで覚醒した
「なに?オレなんかしたの?」
「知らん、とりあえずお前一人で来いってお達しだ!はよ行け!」
渉に聞いてもケツポンされてそのまま店から出された
思い当たるコト…やっぱ無いんだけど?
?を何度も頭の中往復させながら、隣のビルに入った
ま、なんか言われたらソッコー謝ろ…と、ここまで来たら開き直りしか出来なくて、軽く息吸ってドアをノックした
「太輔です…」
「入れ」
「失礼します…」
直ぐにオーナーの声がして、オレはドアを開けた、午後の陽射しが窓から差し込む
部屋の奥にある応接室…オーナーは向かい側の誰かと話をしているようだった
「太輔、来なさい」
「はい…」
応接室は半分パーテーションで遮られた空間、
近づくと、オーナーの向かい側にスーツを着た男がいる
オレの顔を見るとハッと目を見開き、立ち上がった…
その顔には、見覚えがあった…
髪は大分白くなっているけど、優しい眼差しと意思の強そうな引き締まった口許…
「太輔さん…お久しゅうございます、私を覚えておられますか?大きくなられて…」
低めのトーン…でも、オレを《太輔さん…》と呼ぶ穏やかな声音は、記憶の中に確かに残っていた
「みくり…や……?」
その名を呼ぶと、男は涙を湛え大きく頷いた
「覚えていてくださいましたか…、長い間お目にかかれず、本当に失礼を申し上げました…」
そしてオレの傍に来ると、目尻の涙を拭うこともせず、小さい頃と同じようにそっと頭に手を置き撫でてくれた
「もう私の背を追い越されましたね…、時間は残酷だ、自身の老いを確実に伝えてきます…」
和やかな笑顔は、オレの知ってる《御厨蒼介》
だった、懐かしさが込み上げる
「当たり前だろ、あれから何年経ってると思ってる、御厨…元気で良かった…」
親父が病に倒れた後、長年親父付きの秘書だった御厨は、兄貴から存在を疎まれて慰労退職という名でテイのいい解雇処分を受けた
本家では、オレは妾の子…本妻と兄貴からは厄介物扱いされているのは、幼心に分かっていた
誰も味方の居ない四面楚歌の家…唯一オレを親父の子として扱ってくれたのは、御厨だけだった
「太輔さんは類まれなる力をお持ちです、稀代のα…、お父様はとても期待しておられますよ」
「それホント、御厨?」
「はい、勿論です」
ウソでも何でも、オレを褒めてくれのは御厨だけだった…
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まいまい(プロフ) - はじめまして!惹きこまれてどんどん読んでしまいました。どんなに運命に翻弄されても、2人が絶対結ばれると信じてます!カッコいい太輔とかわいい宏光をありがとうございます!! (2020年8月5日 9時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - kazuさん» 一段落のようなので、一日一話でもアップしていきたいなと思います!ラジオやミラツイも始まり、《たいすけたん 》にはうれしたのし大好きな春になりました!花粉に負けず頑張ります!コメ大感謝です! (2019年4月8日 21時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - kazuさん» こんばんは!コメありがとうございます!お子様ですか、今日から新学期でしょうか、お母様は大変ですよね、亀アップなので申し訳ありません、覗いて下さりホントに有難いです、続き楽しみコメありがとうございます!年度変わりの忙しさもやっと (2019年4月8日 21時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - こっちゃんさん» コメ大感謝です! (2019年4月8日 21時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - こっちゃんさん» あの衣装は似合わないですよね、渡辺大さんがあのマレフィセントや魔王やピンクタキシード着てもビミョーだと思います笑、今年の衣装も楽しみです!藤北曲が無いのが残念です、今年お留守番なんですね、いつか密かに同じ会場におられるかもと楽しみにしております! (2019年4月8日 21時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:GAYASAKURA | 作成日時:2019年2月27日 0時