君想う夢・君恋し花 …３

愛を乞う人 … ４９ ページ25

「そか…もう本当に、オレの手の届かない場所に行っちまうんだな…」

言葉にすることで、余計に事実を思い知らされる、片時も忘れたことの無いその人は、いつもオレの目の前であの男に攫われていった…

あの時も…あの時も……


あの人を守る為の武器を何も持一つ持てないオレは、ソレをただ指を咥えて見てるだけ

その手を掴むことは、出来なかった



「藤ヶ谷…」
大倉の同情も、今のオレにはキツかった


「はん、あンのインチキ占い師！《DESTINY HALF》なんてハッタリカマシやがって…、ぜーんぶウソっぱちじゃねぇかよ、へへーあんなの信じたオレらってマジでバカじゃん…」

茶化すコトで、どうにか平静を保つしかなかった

オレは、あの出来事に一縷の望みを託していた…もしも運命と言うものが本当にこの世界に存在するなら、いつか宏光と寄り添って生きていくことを許されるのではないかと…

けど、もう…そんな日は来ない…


「《DESTINY HALF》…運命の半分てことか？」

大倉の問いかけに、オレは視線を逸らせながら
立ち上がった…

「さあな、惹かれ合うコトが約束されたお互いの《半分》てコトらしいけど、…ｸｽ…どうやら宏光の運命を握ってるのは、あのトモって人なんだろ、…オレじゃ、無い…」


何もしてやれない自分が悔しくて…情けなくて…、喉奥にブワリと込み上げる感情のカタマリを飲み下そうとしたけど、とても苦くて出来なかった…


「なら、諦めんのか？」
「え…？」

「花魁のコト、ちゃんと諦められんのか？」

「………」

「お前のコトを、身を呈して庇ってくれた人をそんな簡単に諦めてええんか？」
「諦めるも何も、もうアイツはトモのモノだろっ！どうしろって言うんだッっ！！」

「まだ決まったわけやない、何より花魁の気持ちはお前にしか向いてないんや、取り返すチャンスを待つべきやと思うで」

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