君想う夢・君恋し花 …３

愛を乞う人 … ４２ ページ17

「あの鉱山開発の企業か？」
「せや、半分買い占められたらお前の兄さんは社長解任やろ、現執行役員も…、藤ヶ谷ホールディングス自体がどうなるかは、MIKUNI次第やろな、切り売りか…吸収合併か」

「藤ヶ谷ホールディングスが無くなるってことか？」
「最悪はそうなるやろな…MIKUNIはこの前もレアメタルの山を買うてる、業績はウナギ登りや、鉱山開発ではMIKUNI一強やな」

「……兄貴達はどうなるんだ…」
「そりゃ能無しは去るしかないやろ…なんや気になんの？」

オレを平気でこの世界に売り飛ばしたヤツ…それでも、半分は血の繋がった兄弟だ、

社長の地位を追われるコトを、いい気味だとは思えなかった、親父も無念だろうな…

「………」
「まぁ、それがお前のええトコでもあんねんけど…、それとな宏光やねんけど…」
「うん…元気にしてんのか？」
「元気や、腕のキズも癒えてる、抜糸も済んだみたいや」
「そか…、なら良かった」
「特にあの事で店から理不尽な扱いされてることも無いようやし、まぁ一件落着やと思うで」
「うん…」

気掛かりだったコトが杞憂に終わったらしくて、ホッと胸を撫で下ろした
けど、大倉の表情は冴えない、

「どした？、宏光…なんかあったのか？」
「お前、トモって太客知ってんのか？」
「ああ…知ってるよ」

そう答えると、大倉の表情に変化が見えた

「宏光、今はソイツだけを相手にするようになってる、かなりハイソな家の御曹司らしいやん」
「だろうな、本人は医者だ、産科医って聞いたけど」
「そうなんか、オレが宏光指名したらめっちゃ困った顔されてん、食事の相手しか出来ませんて、オーナーやろな、ハナから牽制して来よったわ」

苦笑いでそう言った


「だろうな…、あの人は宏光が禿の頃から目をかけてるらしい、花魁にまで上げたのはあの人の財力の賜物なんだろう」

結局は、そういうことなんだろう…
宏光を守る為の武器を何一つ持てないオレは、連れていかれるあの人を、指を咥えて見てるしかない

情けねぇな…
宏光を好きだと言う気持ちは、決して負けてはいないのに、それを伝える手段はオレには残されていない…

「…身請けされるんちゃうか…宏光…」
「身請け？」

「トモって人の宏光への執着は、太客と花魁のソレやないで、単に欲求の捌け口でも無さそうや、いずれは手許に置いて…て考えてても不思議やない、…ええんか？藤ヶ谷…」



「だとしても、オレには…それを阻止する権利は無いんだ…」

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