君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … ４６ ページ47

ユリアさんの気持ちはわかる…、この人はオレの背景を知ってる、オレがこんな風にトモの隣にいることが気になるのは当然だ

そんな事を思いながらも、オレは自分の瞳がユリアさんではなく、その隣の人に向くのを止められなかった、そしてその人とオレの視線が今も合わさったままなことに、胸の奥が波立っていた

「姉さんもデート中なんだろ？お互いジャマすんの止めない？」
トモの声に我に返ったオレは、弾かれたように下を向いた、そうだ…この人はユリアさんの…

「いや、デートじゃないんで、オレ、キャストですから、今日は暇つぶしの相手っす」
「あ、バラしちゃた…アンタね、そんなコト言ったら私の立場無いじゃない！あのねぇモテないオンナみたく言わないでくれます？」
「ハイハイ！ユリアが本気出せば、オトコなんか選り取りみどりのイチコロだろ？…おじゃま虫は退散だ、ていうかさ、氷ドロ解けなんだけど！」
「あ、ホントだ、…じゃね智久、北山くん！お祭り楽しんでねー、行くわよ太輔！次は射的！」
「マジかよww」


ユリアさんと腕を組んで歩いていく後ろ姿…
茶色い髪が茜色の光に透け、髪質の柔らかさを伝えて来た

整った横顔のラインに、胸が鳴る…

そして2人は人混みに消えていった…

「コッチ向いて…」
「え？…ゴメン、何か言った？」
意識を戻しトモの方を見ると、切なげな眼差しがオレを捉えていたけど、直ぐに口角を上げた笑顔を見せてくれた

「ん、もう買う順番くるよ、夜は樹屋の席を取ってるし、今はおやつ替わりでいいかな？」
「うん」
「買ったら川べりで食べようか、その方が涼しいし…」
「そだね、そうしよ！」

そして他愛無い会話をしながら、やっと買えたたこ焼き2パックを持って君想橋近くまで歩いて行った

川べりには等間隔で2人組が座ってる
その中には、オレ達みたいな同性の組み合わせも見かけた

皆一様に仲良さげに肩を寄せあって話をしてる
世間に許された2人なのは容易に見て取れた
そして、オレとは違う…ということも…


「あの店が樹屋だよ、君想橋のすぐ近くだから、流れてくる恋星達がよく見えると思うよ」
「ホントだ…」
「まだ早いし、食べたらまたお祭りに戻ろう、恋星流し…、してみよう」
「え？」

恋星流しは、永遠の愛を願う恋人達の為にあるものだ、

「トモ、オレは…ッ」

「…全ての事情が片付いたら、オレは宏光を身請けしたいと思ってる、誰のモノでも無い宏光から、オレだけの宏光にしたい」

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