君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … 28 ページ29

「オレはそう思ってるよ、そうじゃないなら、こんなにも長くココに通わない…、でも、今その話すると宏光もっと混乱させそうだから、止めとくよ…もう寝ような、…おやすみ…」

小さな欠伸を一つして、トモはオレを柔らかく抱き締めたまま、寝息を立て始めた


寝入ったのを見計らって腕を外し、トモの顔を眺めた


トモの寝顔を見たのは、今日が初めてだった

神様が決めたような、その完ぺきなラインとパーツ…




この人は、寝顔すらもこんなに美しいんだ…

確かに、トモがココに通い始めてもう長い月日が経っていた、その間一度もオレに伽をさせることは無く、いつも食事とお酒だけで帰っていく

それを不思議に思いながらも、欲望を満たす相手として見られているのでは無いことが、寧ろ嬉しかったのも本当だった

刹那の愛を売ること以外望まれない自分が、惨めで堪らなかった…

その惨めさを受け入れなければ生きられない人生を、心の底から嫌悪していた




《恋人だと思ってる 》


そんなバカなコトあってはならない…
オレみたいなヤツが、トモの想い人で居ていいはずない…


トモだけじゃない、…誰のどんな気持ちも受け入れてはいけないんだ…


その先に待っているのは…



見たくない現実から目を逸らしたくて、オレは宏光ぎゅっと瞼を閉じた



なのに、そこに浮かぶ人がいる…
唇に残る熱い熱がある…



そして、その人の面影を追う自分がいた



たった一度出会っただけのその人が、オレの中に当たり前のように入り込んで来た、


なぜ？


Ωとして生まれ、親からも疎まれたオレが、誰かに焦がれることをしてもいいんだろうか



名前も知らないのに…




もう会うことすら出来ない人かもしれないのに…





足抜けを阻止する為の格子が嵌められた窓に、オレの《今》を思い知らされる


窓から見えるソラは…どんなに手を伸ばしても格子に阻まれ、指先すら届くはずのない遠い世界



そして、オレは籠の中で飼われてる鳥だ…



この郭という籠から出れば、生きては行けない…









オレの目は







未来にも過去にも、向けてはいけないんだ…

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