君想う夢・君恋し花

愛を売る人 … ２７ ページ28

《星祭り》は、恋人達の為の祭りだ…


普段は相容れない《夢通り》と《花通り》が、一年にたった一度だけ二つの川を繋ぐ《君想橋》の解放で一つに繋がる、というのがかなりロマンティックだと言うことで、その日は想い合う二人がそれぞれの川から願い事を書いたロウソクを紙製の船に立て、二つの川が1つになる君想橋までロウソクが消えなければ、想いは繋がると言われている

トモが言ってる桟敷と言うのは、川を流れるロウソクの明かりを眺めるために、お茶屋に部屋を取ると言うことだった

オレみたいな立場の者がおいそれと行けるような場所では無い、それに…その日は先の花魁であり、家族を知らないオレにとって兄弟の様に思えた《ユウ》の亡くなった日でもあった


《きっとトシはオレを迎えに来てくれる…》

命の尽きる最後の瞬間まで、ユウはそれを信じていた

《会いたい… 》

…切なさが音に変わる…それがユウの最後の言葉だった…閉じられた瞳から涙を一粒零し、握った手からフワリと力が抜けて行った

ユウの願いは、最後まで叶わなかった…

その人を探そうにも、ユウの相手のことは《トシ》と言う名前しか分からなくて、花魁として愛を売ることで生きていくしか無かったユウは、想い人の存在を知られることでの懲罰を恐れたのか、誰にもその人の話をしたコトが無かった


ユウが花街にいることを世間に隠していた両親は、亡骸を引き取ることを拒み、ユウは結局、近くの寺に埋葬された


そんなコトもあって、オレは毎年この日は賑やかな事は避けたい想いが強かった


「樹屋(いつきや)の茶席からは、《君想橋》が良く見える、流れていくロウソクの光がとてもキレイだと評判だ、星祭りの日に迎えに来るよ」

「そんな…オレみたいなヤツと行くなんて、許されないよ、」
「どうして？」
「どうしてって…オレはこの夢通りで生きていく人間だよ、しかもΩだ…、‪α‬のトモがオレを連れてるのを誰かに見られたら、恥をかかせるのはわかり切ってることだよ…」

その気持ちも本当だった

トモは、オレとは別世界で生きる人…

陽のあたる場所は、オレがいるべき場所じゃない、眩しすぎて目が眩んで倒れてしまう…

「恥をかかなきゃいけないのは、そんな風にしか人を見れないヤツらだ、オレは宏光といる所を見られても、何とも思わない…むしろ、恋人として会わせてもいいと思ってるくらいだ」

「ナニ言って…っっ！？」


思いもよらないトモからの告白に、オレは絶句した…

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