I wish to be your only one … L.O.V.E ７ th

Precious Lover … ３０６ ページ17

「心変わり…か…、ホンマにそんなコトあったら、オレもこんな悩めへんねんけどな…」

「…どういう意味？」

ただくんが言ってる事が何を示してるのか全然分からなくて、オレは聞き返した、少しだけ目線が合わされた後、ただくんの指がオレの鼻を摘んだ

「フガッ…ハニ？」
「お前はそんな器用なこと出来るヤツちゃうってコト！あーあ…オレもそろそろ…ええ加減にせなアカンな…ったく…藤ヶ谷のアホンダラ…」

呆れた感をめちゃくちゃ漂わせ、オレの頭をクシャクシャかき混ぜた


「…ただくん？」

見上げた顔は、いつもよりもっと優しい表情をしていた


「宏光、草壁さんのリノベーションの設計の時参考にした物件、覚えてるか？」

「…《繋ぐ家》のこと？」
「せや、…あの家はな、世界一愛し合った二人が、人と人 心と心を繋ぐために設計した家や…、設計者のイニシャル、なんやったけ？」

「イニシャル…？確か《Ｈ・Ｆ》だったと思う…」

かなり前に、ここにいた人だよな…

「……なぁ、《Ｈ・Ｆ》…て、一体誰なんやろな…」
「え？」

なんでそんなこと、オレに聞くんだろ…

でもその疑問を問いかける前に、ただくんは「なら、オレもう帰るわ、お前もファイル作成終わったんやったら、はよ帰りや？」て、事務所を出て行った

ホントだ、いつの間にかこんな時間になってる…

ファイル…地下倉庫で作業してたから、時間の感覚無かったな…

フロアには、もう誰もいない


父さんは昨日からイタリアに出張してるし、もう閉めて帰ろ…


セキュリティかけて、オレも事務所を出た

地下鉄降りて、コンビニで弁当買ってウチに戻る…


いつもの角を曲がると、家の前にタクシーが止まっていた

「太輔！？」

思わず走り出そうとしたオレの目に、太輔の隣に、背の高い外国人が映った

歩みは必然的に遅くなり、様子を伺うように目を凝らす

太輔の手にあるのは、昨日持って帰ってきたスーツケース…

そして、その人と楽しそうに何かを話しながら、タクシーのトランクにソレを入れた


「…なんで？、まさかもうアメリカに行くのかよッ？」


アタマの中がパニックで、そこから動けない

どうすればいい…
もう会えない……


このまま、もう二度と…────っっ！？


駆け寄ろうとした一瞬早く、太輔達を乗せたタクシーは、オレがいる方向とは反対に走り出した


「たいすけ…っ！たいすけっっ！！！」



声を上げても、もう届かない…


そしてテールランプが、視界から消えた

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