I wish to be your only one … L.O.V.E ６ th

Precious Lover … ２７５ ページ35

「本当に、COOを受けてくれるのか？タイスケ」

「私には、本当に大それたポジションだと今も怖気付く思いで一杯ですが、クロフォード会長のお役に立てることが1つでもあるのであれば、私の全てでお支えしたいと思います」



その朝…、オレは誰にも相談することなく、己の未来を決める選択を決断した

人事は企業に於いては、トップシークレット
ましてや後継者関係であれば、事前に情報が漏れることで株のインサイダー取引が行われる可能性がある


丸一日…オレは自分の心と向かい合い、その決断に奢りや私心が微塵にも無いかを問い正した、オレのCOO就任が、組織全体と市場に動揺を与えることは必至だ

オレよりも経験値の高い上席役員は、何人もいる、その人達を押し退けＮｏ．２になると言うことは、恐らく今後のオレの歩く道は茨が生い茂り、置かれる場所が針の筵であることは容易に想像出来た

だけど、それでもオレは、クロフォード会長に頂いた数々の心遣いを思えば、それすら耐えて然るべきだと思った


決断すれば…オレが日本に戻ることは、もう無い…

浮かぶのは、宏光のコト…


たとえ公的にも認められた家族であっても、過去を無くした今の宏光に、全てを置いてオレとアメリカに来て欲しいと言えるはずもない


ましてや仕事にも復帰して、着実にその足跡を残しつつある宏光…、その歩みをオレの都合で止めさせることは、絶対にしてはならないと思った

唯一の救いは、この先も永遠に宏光が《藤ヶ谷宏光》であるという事実、その存在だけは、オレだけのひろであることに変わりはなかった


「離れていても、繋がってるんだから…」

胸にあるマリッジリングを外し、ギュッと手のひらに握りしめ、その手を額に当てた

「何があっても、宏光を愛しいと思う気持ちに変わりはないんだ……、いつかまた恋が始まると信じていればいい…、そうだよな、ひろ…」

もう今は、蜘蛛の糸よりか細く脆い繋がりなのかもしれないオレと宏光…それでも、二人で乗り越えたあの10年の歳月が、オレにその事を信じさせてくれていた


あの日も、同じ気持ちだった

２５歳のオレと宏光…


万感の想いを込めてデザインしたリングを、受け取りに行ったあの日…

白いリングケースに入ったマリッジリングは、オレと宏光の心の繋がりを、一つのカタチとして見せてくれていた

「これからその方を迎えに行かれるんですか？」

「ええ、本当に来てくれるのか不安もありますが、信じて待ってみます」

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