I wish to be your only one … L.O.V.E ６ th

Precious Lover … ２５４ ページ14

ペールトーンの空、薄めた水彩絵の具をサッとと流したような雲とのコントラストが、公園墓地の新緑を際立たせていた

聖堂での葬儀を終え、ダークスーツを纏った人達が埋葬の為に集まっている

中心にいるのはクロフォード会長とCEOの奥様、そしてニック…今にも倒れそうな奥様を支えながら、クロフォード会長と時折話をしている

取り巻きの人達は、皆涙を流しCEOと最期の別離を惜しんでいた

「BOSS、ここに居られたんですか」
「ジョシュアか、…うん、この中では私は部外者だ、お見送りはここからさせて頂くよ、ライアンは？」
「どうしても抜けられない打ち合わせがあって、葬儀には来てないんです」
「そうか、ライアンも君も若手の中では抜きん出て優秀だ、これからJrを支えてあげて欲しい」
「はい、ニックは大切な親友です、私達で出来ることがあるなら力になってやりたいと思っています」
「そうか、なら何よりだ…」

視界を向けると、牧師の祈りが始まっている
布地に覆われた棺がクロフォード家の墓地に埋葬されていく…

本当にもう…

たくさんの素晴らしい機会を与えて下さったCEOの穏やかな顔が思い出され、涙が溢れた

「人としても経営者としても、とても素晴らしい方だった、残念だ…」
「はい、…本当に…」

視線の先の一団の流れが変わった
後は墓守の仕事なんだろう

ハンカチを口に当てた奥様を、両サイドからニックとクロフォード会長が守るようにして車寄せに歩いていった

静寂が公園墓地に戻る…

「私もホテルに戻るよ、君は？」
「社に戻ります、ライアンも間もなく戻るでしょうから」
「そうか…、私も明日は本社に出社だ」

故人を偲ぶ間もなく、今後の経営方針の為の会議が行われる、時間はある意味残酷だな…と思った

「次のCEOを決めるんですね」
「そうだな…トップ不在が長期に続くことは企業としてはマイナスにしかならない、早急な対応が求められるだろう」

「ニック…でしょうか」
「私の口からは何とも言えない、明日の会議でどう動くか…それに尽きる」

順当に行けば、嫡男のニックだろう、だが彼はまだ若すぎる…ビジネスの経験も浅い

世界中に支社を持ち、1万人を超える社員を束ねるにはまだ難しいだろう、本社は優秀な人材の宝庫だ、上席の中から相応しい人物を見極められればそれが一番いい事だ

「BOSS、もう本当に本社には戻られるおつもりはないのでしょうか、BOSSの実績と経歴ならば次のCEOに名前が上がって然るべきだと思います」

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