I wish to be your only one … L.O.V.E ４th

Precious Lover … １８９ ページ45

《お前は、オレの過去には関心が無いし、殆ど一緒にいなかっただろ…》

他愛なく発せられた言葉だと分かっていても、心の奥深い場所に、鈍い痛みを呼んだ

このまま全てを打ち明けたら、ひろはオレを受け入れてくれるんだろうか、あの頃と何一つ変わらずに、オレと家族として暮らすことを受け入れてくれるんだろうか…


「ひろ…オレね……」

言いかけた言葉は、喉の奥で音になることなく消えていった

目の前の宏光は、とても不安な表情でオレを見つめてる…ただえさえ、今の状況に混乱してる、…言えるワケ、無い…


「そんなコトないよ、親友…が悩んでんのに見て見ぬふりとか出来るわけないだろ、もう少し落ち着いてからでもいいんじゃないかって思ってたからさ、…でも早く知りたいなら、いいよ、事務所のみんなもひろに会うの、凄く喜ぶと思うし」

そう言って笑ってみせると、宏光の表情が少しだけ和らいだ

「何も分かんないオレでも、かな…」

「ﾌﾌ、行けば分かるよ、ひろがどれだけ事務所の皆に慕われてたか、岸くんと安井くんなんか泣き出すかもな！」

「岸くんと、安井くん…？」
「そう、ひろの後輩で…んー右半身かな？」
「え、右半身？なんだよソレ」
って、声を立てて笑ってくれる…、久々に聞いた宏光の鼻に掛かった優しい笑い声は、この家にしばらく無かった明るさと温かみを連れてきてくれた

二人でいた時は、ひろはこんな風にいつも笑ってくれていた

全てが上手くいかず行き詰まった時も、様々な制約や重圧で、精神的にいっぱいいっぱいになっていた時も、いつもオレに寄り添ってくれて、この笑顔で癒してくれた

「大丈夫だ、オレがいるだろ？」って背中を押してくれる…苦しみを一人で乗り越えたことなんか無い…

いつも、どんな時も…この人が支えてくれたから…

あの頃も、そして今も、オレの《愛しい》が、際限なく胸に湧き上がる



けど、今の宏光にはその時の記憶は皆無だ

どれほど深く愛しいと思っても、届くことは無い


「…たいすけ？」

キョトンとした表情が、ホントに可愛くて、ふと笑みが零れた


「ん、…いつ行こうか、事務所」
「いつでもいいよ、太輔のいい時で構わない…」

「そか、ならお義父さんに聞いてからにしような、皆の仕事に差し障りが無い時がいいだろうし」
「うん、それでいいよ…、ありがとう、太輔」
「全然…、何か、そこから始まるといいな」

「オレもそう思う…、手探りかもしれないけど
ホントのオレを…取り戻したい…」

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