I wish to be your only one … L.O.V.E ４th

Precious Lover … １４９ ページ5

宏光が眠ってる間、時間を潰そうとオレは外に出た

本当に広大な敷地…、中庭に出ると冷たい風が頬に当たる、見つけたベンチに座り見るともなく周囲に目を馳せた

3月になって幾日か過ぎた…でも季節はまだ冬を色濃く感じさせる、常緑樹と落葉樹がバランスよく植えられた中庭は、風の冷たさもあってオレだけの貸切になっていた

「さみぃな…」
ハァ…と手袋を忘れた手に息を吹きかけ、そのままポケットに手を突っ込んだ

「春なんか、来んのかな…」

毎年桜の花が咲くと、７人で花見をした、渉の店からそんな遠くない穴場みたいなトコに桜の木があって、ここ何年かはそこで花見をしていた、渉が作った三段重ねのお花見弁当を食べながら、今年も全員で来れて良かったな…と嬉しく思った事を思い出した

そう言えば、今年は春になったら京都に行こうって言ってたんだ…確か大倉のデザインのって町屋の呉服屋が依頼したギャラリーだっけな…

そしてオレは大倉の事を思い出した

「オレの出来ることで、宏光安心させてやりたいんや」
もし仕事の復帰が難しいなら、ひろの代わりに事務所に入ることを了承した大倉、一先ず手術が終わったことは伝えて方がいいだろう、心配してるだろうし…

ケータイを取りだし、検索してタップ…
ツーコールで直ぐに繋がった

「藤ヶ谷？どないしてん？」

耳に入る超えは、大倉の焦りを感じさせて来た
「ん、宏光の手術が終わってな、お前心配してくれてたから伝えとこうと思って…」
「そうか、終わったんか…それで？宏光大丈夫なんか？」
「うん…腫瘍は全部取り除いたから再発の心配はないそうだ」
「それなら何よりや！良かったな藤ヶ谷…、それで宏光…お前の事、わかったんか？」

迷いながら聞いてくる大倉に、オレは事実を告げた

「目が覚めてすぐ…《誰？》って言われた…結構キツかったな…」

そう言うと、短く息を呑む気配がした

「そうか…せやな……なら仕事の復帰は、まだ先になりそうやな」
「うん…担当医から焦って思い出させるような事は極力避けて欲しいって言われてる、まだそこまでの話は出来ないかな…」

「そうか…そうなんやな…」

ポツリ…と大倉が呟いた

「藤ヶ谷」
「なに？」

「あの話…オレ、動いていいか？」
「宏光の事務所に…って話だよな」
「そうだ…宏光が復帰出来るようになるまで、手伝わせてもろうてええか？」


「ひろが望むことにオレは異論は無いよ、けど最終判断は、事務所の代表のお義父さんだから…」

Precious Lover … １５０→←Precious Lover … １４８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す