I wish to be your only one … L.O.V.E ４th

Precious Lover … １７１ ページ27

「宏光がお世話になりました、新海先生」
「いえ、退院おめでとうございます、宏光さん、思ったより快復が早くて驚きました、退院に当たって記憶の欠落でのメンタルを心配していたのですが、カウンセリング担当の心療内科のドクターも、特筆すべき問題点は無いようだとの見解でした、何よりです」

退院を迎えた当日…

ひろが退院前検査を受けてる間、オレは新海先生に挨拶に行った、オペ中だったらどうしようか…と思っていたけど、新海先生は医局でカルテの書き込みをしていた

「そうですか、なら良かったです…アイツは昔から周りを気遣って、自分の辛いことは隠してしまう性分なので、ですが専門医がそう仰るならホッとしました」

「貴方が傍にいることが、宏光さんの心の安定に繋がっているんだと思います…、想い出は欠落しても、心で繋がった絆は切れない…、脳外科医は常にリアリストでなくてはなりませんが、お二人を見てると、今回ばかりは私もロマンチストになりたいと思いました」

楽しそうな表情を見せ、新海医師はそう言った

そんな風に言われて何となく気恥しくなり、オレは軽く頭を下げた

「新海先生も、そんなジョークを言われるんですね」
「いえいえ、至って真面目ですよ！」

おどけた返しに笑いあってると、「太輔、診察済んだ！」と、看護師さんに案内されたのか後ろから宏光の声がした

「お疲れ様、大丈夫か？」

そう尋ねると、まん丸い目をきゅるんと輝かせて大きく頷いた


「おん！特に問題ないってさ、このまま帰っていいって！…新海先生、お世話になりました」

「退院おめでとうございます、よく頑張られましたね、ですがご自宅に戻られても未だ無理は禁物です、生活のペース配分を大切にしてください」
「はい！分かってます！」

ハリのある声で答える宏光、包帯も取れてすっかり以前と元通りの様子に、オレは安堵した
手術の際に髪を切られたせいで、左右の長さが若干違ってて、今は紺色のニットキャップを被ってる

そのせいで余計に顔が小さく見えた

ホントに幾つになっても、小動物感は消えないよなぁ…って眺めてると、「お前ガン見すんな、恥ずい」って言われた

クスクス笑いながら新海先生がオレたちを眺めてたけど、「では、私は回診があるので、これで失礼します」と告げられた

「お世話になりました」
「また定期検診でお会いしましょう…藤ヶ谷さん」

その呼び名にオレはハッとした

「はい、太輔も連れてきます！」とひろが答えた

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