I wish to be your only one … L.O.V.E ４th

Precious Lover … １７０ ページ26

《想い出…作ろ…》


切なさを重ね合わせた眼差しと声…

入院してる間、ふと気付くとこんな風にオレを見つめてる太輔、

抱きしめられる様なその視線に、次第にオレは息苦しい程の…心の奥…自分でさえ見えない最奥に、痛みにも似た感覚を覚えるようになった

そこに湧き上がる想いは嬉しさや喜び…ではなく、むしろ罪悪感に似た負い目の様なものを感じていた

オレは、何かとても…大切な事を忘れているんじゃ無いだろうか、《手術の後遺症》の一言で割り切ってはいけない何か…


それが、太輔と一緒に作る想い出の中にあるような気がした
想い出を作る…ソレは過去にあった事を、リメイクするってコトに繋がらないんだろうか


「…太輔、オレとお前ってどんな想い出があった？子どもの時からオレと太輔トモダチなんだろ？例えばどんなコトがあったんだ？」

何気なさを装い聞いたオレは、太輔の瞳に明らかな動揺が現れたコトに気付いた、だけどその動揺は、直ぐにナリを潜めてしまい、いつもの穏やかな太輔の顔になった

「太輔…？」

「…ん？、うん…、でも実質一緒に過ごしたのって……ルームシェア始めたこの10年くらいだから…、高一からの10年は、オレはアメリカだったから全く接点なかったんだよ…、その後も宏光は日本で仕事してたから…」

「オレ仕事してたの？何の？」

そう尋ねると、太輔はどうしようと思案顔になった、伏し目から瞬きを何度か繰り返し、やがてオレに顔を向けた

「……建築だよ、ひろは建築デザイナーだ、お義父さんが代表のデザイン事務所で住宅や商業施設の設計をしてた、…覚えて…ない？」

恐る恐る…と言うふうに聞いてくる太輔、でもどれほど脳内をフル回転しても、アタマの中にも目の前にも何一つその情景もイメージも湧いてこない


「…分からない……」としか答えられなかった

「そう…、でもそれは宏光のせいじゃないよ、アタマの中…記憶を司る部分の手術をしたんだ、何かしらの影響があって然るべきだ、新海先生もそう言ってただろ」

確かに…そうだ…

けど、その手術は《オレがオレである為》に大切な記憶を根こそぎ搾取していった


もう、過去は取り戻せない…


それが現実であることは、今のオレが理解しなければならない歴然の事実だ


だけど、そこからオレは…どう生きていけばいい

ターニングポイントになるキッカケが何処かに…







「…太輔、退院したらオレをその事務所に連れて行ってくれないか？」

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