I wish to be your only one … L.O.V.E ４th

Precious Lover … １６３ ページ19

日差しタップリの中庭…

色んなトコに、ベンチが置いてあって入院患者さんと付き添いの家族の人達が春の訪れを肌で感じているようだった

ひろは、最初オレの後ろから周りを伺うように着いてきていたけど、中庭の真ん中にある花壇を何個も設えたオブジェみたいな場所を見つけると、心惹き付けられたようにオレを追い越しその場所に歩いていった

覚えてなくても、ひろは根っからの建築家だ…
オレと《でぇと》してる時も、目新しい建物を見ると今みたいにオレを放ったらかしで、グルグルその周りを回って、写メ撮ったりメモやデッサンを書いたりしていた

その後のご飯タイムは、さっき見た建物のアレがいいとか、ここが好きだとか目をキラキラさせて話してくれていた

「ホントにひろ、今の仕事好きなんだな」
「うん、自分で言うのもなんだけど天職だと思ってる、元々はお前の隣に相応しい自分になりたくて選んだ仕事だけど、今は…人生懸けて極めたい《生きがい》、かな…まだまだ先は長ぇよ」

って、幸せそうに微笑んでいた


今のひろの目の輝き、その時と同じだ…
心の中に刻み込まれた想いは、永遠に消滅することはないんだろうか

それなら…もし、そうなら…


「ひろ…」
隣に行って名前を呼ぶと、フイっとオレに顔を向けてくれた

「…花、キレイだな…これなんて名前だっけ？」

目線をまた正面に向けて、そう聞いてきた

「…パンジー…すみれだよ…」
「すみれか…こんなたくさん色あるんだな、７色か…」

興味があったのは、花か…
ひと足早く春を満喫させてくれるように咲き染むる、すみれの花…

想いとは違っていても、心和ませてくれる彩の群れにオレとひろは、魅入っていた

「キレイだな…」
「宏光、何色が好き？」
「……ピンクかな、なんかお前っぽい、そういやその時計、文字盤にもピンク色の石入ってるよな」

ひろの視線が左手に移る、入籍記念のペアウオッチ…ひろのはオレが預かっていた、
フェイス裏面のイニシャルは《HIROMITHU ・FUJIGAYA》で入れた《H・F》、文字盤の同じ位置に、ルビーを嵌めてもらった特注品…

そして、オレの胸に有るのは結婚指環…

チラリと見たひろの左手薬指には、まだリングの名残が残ってる…そしてオレの指にも、同じものが…

今はこのシルシに縋るしかない、オレとひろの関係性…


トモダチ…親友……ルームシェア…


それ以上でも、それ以下でもない…


二つの絆にそっと触れ、丸い鼻先の横顔を、切なさのフレームに納めた

Precious Lover … １６４→←Precious Lover … １６２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す